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このページでは、制御盤に必須となるブレーカ、サーキットプロテクタの種類や選定基準について紹介しています。
制御盤の回路構成を検討する上でもブレーカは必須の部品であり、仕組みや種類については把握しておいたほうがいいでしょう。
初めてのブレーカ選定だと、カタログを開いたらいっぱい種類があって、どれを選んでいいか分からないですよね。
実際、私もカタログを何度も見て覚えるまでは大変でした。
ちょっとだけヒントがあれば選べるんですけどね。
このページでブレーカの仕組みや種類、選定基準を覚えてしまいましょう。
主回路の設計と部品選定が出来るエンジニアとして信頼が得られます。
※制御盤製作については『制御盤製作案件時の業務手順』『仕様確認の手順(制御盤案件時)』も併せてご覧ください。
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1.ブレーカってなに?
ブレーカは日本名で『配線用遮断器』と呼びます。
英語では『Molded Case Circuit Breaker』と書くので、略してMCCBまたはMCBと表現します。
まれに『No Fuse Breaker』略してNFBなどと表現されることがあります。
しかし、これは三菱電機製ブレーカの商品名であり、一般的な表現ではありませんので気を付けてください。
私も勤め先で三菱電機製のブレーカを標準で選定しており、若いときに回路記号を『NFB』と表記して注意されたことがあります。
ブレーカの動作は主に二つあります。
一つは前にあるレバーを上下することによって、電源送りをON/OFFすること。
二つ目は二次側の回路において過電流が発生した際に回路を切り離して対象機器や電線を保護することがあります。
過電流を検知して回路を切り離した場合にはレバーはONとOFFの中間になり、遮断したことが分かるようになっています。
遮断することをトリップと言います。
遮断には、遮断容量というものがあり、各電圧値によって遮断できる最大の電流値がメーカーカタログ等に記載されています。
数値はほとんどがkA(キロアンペア)で記載されています。
遮断容量は大きければいいのですが、過剰に大きい遮断容量を持たせてもサイズが大きくなります。
価格も高くなってしまいますので、その辺りは用途だったり、客先と相談しながら決めていくことになります。
ブレーカについてのまとめ
- ブレーカは電源送りをON/OFFする役割がある
- 回路を遮断して対象機器、設備、電線を保護する役割がある
2.どんな種類があるの?
ブレーカの種類は、最近では様々な種類のブレーカが出ています。
ここでは4種類について説明したいと思います。
まずは1項でも説明した『配線用遮断器』(MCCB)です。
動作も1項で説明した通りの動作をしますので、ここでは説明を省略します。
二つ目に『漏電遮断器』です。
英語では『Earth Leakage Circuit Breaker』と書くので、略してELCBまたはELBと表現します。
MCCBにある過電流の遮断機能のほかに、漏電を検知して遮断する機能があります。
漏電ブレーカの内部には零相変流器が組み込まれており、各相に流れる電流の和は”0″(ゼロ)になります。
正常な状態であれば、零相変流器の二次側にも電流は流れません。
しかし、どこかで電流が漏れてしまった場合には各相の電流の和は”0″(ゼロ)ではなくなります。
このとき、零相変流器の二次側に電流が発生します。
この電流を検知して遮断する機能が漏電遮断機能です。
人的保護、機器保護によって感度電流を選定し、その感度電流以上の電流を権威すると遮断する仕組みです。
三つ目ですが『モーターブレーカ』というものがあり、略してMBと表現します。
電動機が負荷としてある場合、電動機の特性である始動時に大きな電流が流れることを考慮してブレーカは電動機の定格電流よりも大きな値のトリップ値(遮断電流値)を選定します。
電磁接触器とサーマルリレーで機器を保護する回路とするのが一般的です。
MBの場合は配線用遮断器+サーマルリレーのような動作が可能になります。
選定時も電動機の定格容量と定格電流で合わせることが出来るので選定は楽になります。
注意点として、高効率モーターの場合は始動時の大きな電流が流れる時間が長くなっているため、旧型のMBだと始動中にトリップしてしまうことがあります。
最近は高効率モーターが主流となっているので、この場合は通常の組み合わせである 配線用遮断器+電磁接触器+サーマルリレー として、サーマルリレーを高効率モーターに適正のある遅動型を選定して対応する方がよいでしょう。
また、最近ではIE3モーター対応のモーターブレーカを販売しているメーカーもあります。
参考 三菱WS-V Series IE3モータ対応 モータブレーカ・モータ保護用漏電遮断器 PR形(PDF)三菱電機モーターブレーカを使用するときは、モーター側の仕様もよく確認して選定します。
最後に『サーキットプロテクタ』ですが、略してCPと表現します。
機能としては配線用遮断器とほぼ同じですが、配線用遮断器では低容量のトリップ値がラインナップにないことが多いです。
1~30A程度の低容量の回路において、主に対象機器の保護を目的として使用します。
また、大きさも小さいために遮断容量は低い値となります。
しかし、省スペース化が図れるため制御盤では制御回路においてよく使用されています。
低容量とは書きましたが、ラインナップとしては30Aくらいまではそろっています。
ブレーカ種類のまとめ
-
配線用遮断器:過電流を検知すると回路を遮断する
-
漏電遮断器:配線用遮断器の機能に加えて、漏電を検知して回路を遮断する
-
モーターブレーカー:配線用遮断器+サーマルリレーのような機能を併せ持っている
-
サーキットプロテクタ:配線用遮断器より小容量で細かくトリップ値が用意されている
3.何で設置しなくちゃいけないの?
ブレーカの役割と種類についてはここまででお分かりになったと思います。
しかし、なぜ設置しなければならないのでしょうか?
1項でも説明した通り、ブレーカは電気のON/OFFと機器の保護という点があることは説明しました。
もう一つ、遮断する理由があります。
それは、機器側で過電流が発生した場合にブレーカがなかったとしたら、その上の電路にまで過電流が流れて、電信柱の電線にまで流れ込む恐れがあります。
工場などでは、過電流が発生した制御盤だけではなく、工場全体を止めてしまったり、地域の停電にまでつながってしまう恐れがあります。
施設より外へ被害を広げない為にもブレーカの設置は必要不可欠です。
配線用遮断器の設置の必要性は上記の通りですが、漏電遮断器(ELB)はなぜいるの?という疑問も生まれるかと思います。
ELBは水気のあるところや鉄板などの導電性の高い場所において電動機類を使用する場合などに設置義務があります。
主に人的保護の観点から必要なのですが、人間は体に2~3mA程度の電気が流れるとピリピリと感じ、この程度では少し痺れる程度の影響しかありません。
しかし、20mA程度流れると体が痺れて動かせなくなり、継続して流れ続けると命に関わる影響があります。
これ以上の電流が流れるとかなり短い時間で命に危険があります。
数100mA以上流れた場合には家屋の火災などの危険があります。
よって、人が触るであろう機器などに対する漏電遮断器の感度電流は15~30mA程度で遮断する必要があります。
主に人の保護の観点から漏電遮断器の設置が必要となります。
ブレーカ設置のまとめ
- 施設より外へ被害を広げないためにブレーカを設置する
- 漏電遮断器(ELB)は人の保護や火災防止の目的で設置する
4.選定基準は?
ここまででブレーカの役割、種類、設置の必要性はわかりました。
このページをご覧のあなたが知りたいのは「じゃあ、どうやって選ぶの?」だと思います。
ここで、私の場合の選定基準をご紹介します。
私の場合の選定基準
制御盤の一次ブレーカ(受電後の最初のブレーカ)
MCCBとELCBのどちらにするかはELCBの方が値段が高いこともあるため、客先に確認しましょう。
ELCB選定の場合は、感度電流は100/200/500mAの切替式を選定します。
トリップ値はその設備の容量を計算し、遮断容量は各対象機器へのブレーカよりも大きいものを選定します。
私の選定例としては以下となります。
メーカー:三菱電機
(MCCB)型式:NF-**SV(F)シリーズ
(ELCB)型式:NV-**SV(F)シリーズ
※**にはフレームサイズ(ブレーカの大きさ)の数値が入ります。
各対象機器のブレーカ
電動機とヒーター回路については、人が整備したり交換したりする作業が発生すること、付近の金属を伝わって人に影響する恐れがあるので基本的にELCBとします。
この場合の感度電流値は15mAまたは30mAとします。
その他の機器については特性や使用方法を把握しておきます。
人が関わることが多いのであればELCBを選定し、そうでなければMCCBを選定します。
水気の近くや金属物がつながって他の人が多く来る場所などへつながっている場合にはELCB設置を強く推奨します。
しかし、ELCB選定の場合は価格が高くなるため、最終判断は客先に確認します。
(使用用途の限定、立ち入り禁止処置などあればMCCBでも可)
遮断容量は制御盤一次ブレーカよりも小さいものを選定することが多いですが、同じもので統一する場合もあります。
私の選定例としては以下となります。
メーカー:三菱電機
(MCCB)型式:NF-**CV(F)シリーズ または SV(F)シリーズ
(ELCB)型式:NV-**CV(F)シリーズ または SV(F)シリーズ
制御回路のブレーカ
制御回路の一次ブレーカは遮断容量も確保したいため、MCCBとします。
そのほかの回路においては用途に応じてMCCB、ELCB、CPと使い分けます。
個別回路においては安価で遮断容量も小さいCPを選定することが多いです。
私の選定例としては以下となります。
メーカー:三菱電機
(MCCB)型式:NF-**CV(F)シリーズ または SV(F)シリーズ
(ELCB)型式:NV-**CV(F)シリーズ または SV(F)シリーズ
(CP)型式:CP30-BAシリーズ
注意点
漏電遮断器の選定の際に電圧に注意して選定してください。
私の選定例ではAC200VもAC400Vも対応している漏電遮断器ですが、別メーカーではAC200V専用品があり、誤ってAC400Vの回路に使用すると中に入っている漏電検出の基盤が燃えてしまいます。
制御盤に電源投入して煙が出たのを目撃したことがあります。
コストダウンを考えて安い漏電遮断器を選定したところ、AC200V専用品だったようで全て交換していました。
漏電遮断器の選定の際は使用電圧に対応しているものを選定してください。
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5.補助接点
ブレーカ本体の選定が終わったところで、最後に忘れてはならないのが補助接点です。
ブレーカには補助接点、警報接点などの機能を持たせてブレーカがどのような状態かを把握するための接点信号が用意されています。
補助接点
ブレーカがONしているかOFFしているかがわかる接点です。
ほとんどのメーカーではC接点(ON時に接点が閉するa接点、OFF時に接点が閉するb接点)が用意されています。
警報接点
ブレーカがトリップしたことが分かる接点です。
こちらも補助接点と同じくC接点(トリップした時に接点が閉するa接点、トリップした時に接点が閉するb接点)が用意されています。
信号として使用する場合には、補助接点の場合であればa接点が閉していなければ機器の運転ができないように制御回路を構成する時に使用することが多いです。
警報接点の場合は、a接点が閉していたら機器を停止させ、運転させないように制御回路を構成して使用することが多いです。
あとから手配するのは大変なので、忘れないようにしましょう。
6.さいごに
あまり詳しく説明しても情報量が多くて把握しきれないことがあるので、まずはおさえてほしい部分のみを絞って説明しました。
ここまでわかっていれば、特殊な設備でない限りは問題なく設計できると思います。
自分なりの選定基準を決めて、サクッと選定してしまいましょう。
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