電気制御に関する設計業務、製作業務、ご協力いたします!

制御盤製作時の部品選定(DC電源)

スポンサーリンク


今回は、制御盤の制御回路でよく使用されるDC電源の仕組みと種類、選定基準について紹介します。

DC電源はどんなものでどんな種類があるのか、選定はどうすればよいのか、初めての選定だと困ることが多いでしょう。

このページで仕組みや種類、選定基準を覚えてしまえば、次から選定するのにあまり時間はかからなくなります。止まる時間が少なくなれば、他の仕事に費やす時間が作れるので、頑張って覚えてしまいましょう。

※制御盤製作については「制御盤製作案件時の業務手順」「仕様確認の手順(制御盤案件時)」をご覧ください。

スポンサーリンク

1.DC電源ってなに?

 

DC電源は交流電圧(AC)を直流電圧(DC)に変換して出力する部品です。AC-DCコンバータ、低電圧電源などと呼ばれることもあります。

制御回路では元々の受電はAC400V、AC200V、AC100Vのいずれかがほとんどであり、直流で受電することはほぼありません。

直流に変換する必要性として、制御電源は信号を使って様々な機器を制御するためにあり、主回路機器の作動のように高電圧、低電流にする必要がないために、安全性を考慮すると感電しても命に危険のない電圧まで下げた方が良いです。

近年では制御盤内での制御回路は主にDC24Vで制御することが多くなっています。安全性を考慮して直流電圧に変換して制御するためにDC電源を使用して電圧を変換しています。

 

目次へ戻る

 

2.どんな種類があるの?

 

1項で説明した通り、DC電源の役割や用途についてはお分かりになったかと思います。DC電源はどんな種類があるのかというと、主に2種類、スイッチング方式とシリーズ方式(ドロッパ方式、リニア方式)があります。現在はスイッチング方式が主流となっており、需要があります。

それぞれに特徴があり、まずは主流となっているスイッチング方式のDC電源についてです。高効率であり、重量もとても軽く、安価であると言う長所があるものの、内部で一旦整流して、高周波の交流電圧に変換して再び直流にしているためにノイズが大きいことが短所として挙げられます。

それに対してシリーズ方式のDC電源はスイッチング方式とは変換の仕方が違うのでリップルやノイズが小さくなるという利点があるものの、大きくなり重量も重くなってしまい高価であるということが短所として挙げられます。

制御盤の用途で使用する場合にはほとんどがスイッチング方式のDC電源で問題ないことが多いですが、精度を求められる場合やノイズの小さい直流電圧が必要な場合には、スイッチング方式にするか、シリーズ方式にするかよく検討する必要があります。

 

目次へ戻る

 

スポンサーリンク

3.選定基準

 

ここまででDC電源の役割、用途、種類についてはお分かりになったと思います。このページをご覧の方はどうやって選定するかを知りたいと思いますので、ここでは選定の基準について説明していきます。

 

  1. 入力電圧
  2. 出力電圧
  3. 出力容量
  4. サイズ、取付方法の確認
  5. 私の場合の選定基準

 

3-1.入力電圧

 

入力電圧は主にAC100V、AC200Vが多いです。最近ではAC100-240Vのマルチ入力式のDC電源がとても多くなってきました。ほとんどのスイッチング式DC電源はマルチ入力になっているのではないでしょうか。そのくらいマルチ入力が主流になってきています。

主回路の作動の関係上、制御盤の受電はAC400VかAC440Vが多いのですが、対象機器が数点しかなく単純なON/OFFの制御のみの場合にはPLCなども入れずにリレー制御のみで制御することがあります。

ひと昔前までは変圧器を入れてAC100Vなどに降圧して制御電源として使用していましたが、最近ではAC400V入力のDC電源がOMRONより販売されています。このDC電源を使用することで、主回路電圧はAC400V、制御電圧はDC24Vという制御盤を製作することが可能になりました。小型の制御盤を製作している方は選定候補に入れてみても良いと思います。

 

3項目次へ戻る

 

3-2.出力電圧

 

出力電圧はどんなものがあるのかというと、DC48V、DC24V、DC15V、DC12V、DC5Vのラインナップは見かけます。主に制御盤の製作ではDC24Vを使用しますが、特殊な機器や海外製の機器を制御する場合にはDC48VやDC12V、DC±15Vでの制御もあり得ます。

制御機器を自分で選定する場合には、初めからDC24Vで選定すればよいのですが、客先からの指定品などがある際には制御電圧にも注意してDC電源の出力電圧を決めましょう。

 

3項目次へ戻る

 

3-3.出力容量

 

DC電源を選定する場合には出力容量で選定します。制御機器が決まっていれば制御回路での最大電流値は計算で分かる状態になっていると思いますので、回路の電流値を算出して容量を決めましょう。容量はDC24Vの場合、電流値が1Aで24Wですので、全体で使う電流値より少し余裕を持たせて選定しましょう。

以下にDC24Vでの場合の容量を記載しておきます。早見表などにしておくと便利だと思います。

 

DC24Vの場合の容量

1A:24W
3A:72W
5A:120W
7A:188W
9A:216W

 

単純に24×電流値で求められるのですが、早見表にしておくと間の電流値でも大体で何Wなのかがパッと見て分かりますので、決定作業を早くするためにもご自分で使用する範囲で作成しておくことをおすすめします。

ラインナップとしては各メーカーや機種によって様々なのですが、あまり細かく分かれていません。30W、60W、90W、120W、180W、240w、300W のように、最初は30W刻みで途中から60W刻みになり、もっと大きな値で刻んだワット数のラインナップになります。

容量は不足していると電源が落ちてしまったりするので、容量には20~30W(10%)程度の余裕を持たせて選定しましょう。

 

3項目次へ戻る

 

3-4.サイズ、取付方法の確認

 

ここまで選定して忘れてしまいがちなのがサイズの確認です。制御盤には許容サイズがありますので、スペースに入るサイズになのかを必ず確認しておきましょう。

サイズ確認と同時に取付方法とDC電源への入線も確認しておきましょう。取付方法は穴あけ加工が必要かどうか、ブラケット等を製作する必要があるかないかに関わってきます。DINレール取付が主流ですが、ブラケット製作が必要な場合は板金設計が必要になりますので、よく確認しておきましょう。

また、DC電源によって入力、出力の端子位置は違いますので、配線ルートを考慮して選定することが必要です。上から入って下に出るものもあれば、すべて横からの入線となっているものもあります。よく確認して製作時に困ったことにならないように注意しておきましょう。

 

3項目次へ戻る

 

3-5.私の場合の選定基準

 

ここまでで選定基準は分かったと思いますが、私の場合の選定を以下に記載しておきます。全く初めての選定であれば、ベースとして考えていただければと思います。

 

入力電圧:AC100~240V(まれにAC400V入力)
出力電圧:DC24V、特殊仕様機器は別途仕様に合わせて検討
出力容量:都度仕様に合わせて検討
サイズ、取付方法:なるべくDINレール取付

 

具体的な選定品

・AC100~240Vの場合
メーカー:OMRON
型式:S8VSシリーズ(表示機能付き)

・3ΦAC400V入力の場合
メーカー:OMRON
型式:S8VK-Tシリーズ

・AC100~240Vで環境が悪い場所の場合
メーカー:OMRON
型式:S8VK-Gシリーズ

・AC100~240Vで精度を求められる場合
メーカー:コーセル
型式:都度検討

・出力DC100Vで使用する場合(48V出力を調整して50V出力2台の直列運転)
メーカー:コーセル
型式:都度検討(メーカーに入手状況など問い合わせして決定)

 

様々なパターンがあると思いますが、想定されるパターンでの具体的な選定を決めておくと早く決められます。自分の業務のよくある仕様について把握した上で標準品を決めておくことをおすすめします。

 

3項目次へ戻る

 

目次へ戻る

 

4.さいごに

 

私の選定例はあくまでベースとして参考にしていただければと思います。

どのメーカーのどのようなものを選定するにせよ、自分の業務にあった仕様にマッチするものをあらかじめ標準品として決めておくことは手順化の一つです。当てはめればどの電源になるかを決めておけば、考える時間も減らせるので選定も早くできることになります。

よく使っているものであれば調整なども簡単に出来るようになりますので、標準品を決めておきましょう。

また、特殊品の場合はよく仕様を確認して出力電圧、容量を決めましょう。

 

関連記事:制御盤製作時の部品選定(リレー)