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今回は制御盤製作の案件時に、客先へ確認する仕様内容と手順について紹介します。
客先から案件の話があった場合には、どんな制御盤を要求しているのか確認する必要があります。
でも、初めて担当した仕事だったり、人事異動で初めて制御盤に関わる場合は、どんな内容を確認していいか分からないと思います。確認する仕様内容と手順を覚えてしまえば、あとは相手に質問して回答をもらえれば制御盤が製作できます。
スムーズに仕様確認が進めば、相手も「この人は分かってそうだな」と安心し、あなたへの信頼度も上がって仕事がやりやすくなります。さらに、次の仕事のお話もいただけたりすれば、あなたの評価は上がって昇格や賃金アップが期待できます。
目次(概要)
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1.どんな大きさのものか?(幅、高さ、奥行き)
まずは製作するものの大きさをどのくらいのものにするか、または客先でどの大きさにするか見当がついているのか確認します。客先で見当がついている場合には、その根拠なども聞いておきましょう。大きさ制限が分からなければ、検討時に制御盤の大きさが決められずに作業が止まってしまうなど、困ることが多いです。
制御盤であれば、幅(W)、高さ(H)、奥行き(D)の寸法許容値は必ず確認しましょう。
また、特殊な形でないかの確認も必要です。寸法だけ聞いて箱型をイメージしていたら、”実は違った”なんてことも起きたりします。製作物の大きさや形を分からずに検討を開始するのは手戻り作業が発生したり、場合によってはやり直しになる可能性もあります。
やり直しや手戻り作業にならない為にも必ず確認しておきましょう。
2.設置スペースは?(許容範囲は?)
製作物を設置する場所のスペースがどのくらいあるか確認が必要です。これから検討を開始する上で、スペースから製作物の大きさ制限を知っておけば話がスムーズになります。客先がスペースを把握せずに大きさの見当をつけている場合などもあり、確認必須項目です。
見逃しがちなのが、運搬ルートと設置場所の突起物(でっぱり)などです。
・設置場所までどうやって運ぶのか?
・台車運搬で問題ないか?
・フォークリフト等を使用するのか?
設置まで請け負っていなければ確認は不要ですが、設置まで請け負うのであれば、確認必須です。
また、設置場所に立体的な凹凸(でっぱり等)があると「どうやってそこに置くの?」という場合があります。トラック等で輸送してから降ろして設置するまでを確認してあげると、客先にも喜ばれることが多いです。客先が気づいていないことにこちらが気付く可能性もありますからね。
よく巷で聞く「冷蔵庫買ったけど、家に入らなかった」という状態にならない為にも設置スペースは確認必須です。
3.材質と厚みは?(SPCC、SUS等、板厚)
製作物の材質と厚みを確認しましょう。鉄製なのか、ステンレス製なのか、材質と厚みによって筐体の重さは大きく変わります。扉1枚でも、鉄製で厚さを 2.3mm or 3.2mm のどちらにするかで開閉時の重みはかなり違ってきます。
製作物の大きさと関わって重量に対して大きな影響を与える部分になります。
4.重量制限は?(設置場所の床面強度)
設置場所の重量制限があるのか、何kgまで許容範囲なのか確認しましょう。製作物の大きさ、材質と厚み、制御回路の使用材料に大きく関わってくる項目です。床面の強度に耐えきれない重量のものを製作して、設置したら床が抜けてしまったのでは大きな問題になります。
制御盤は工場等に納入することが多いと思いますので、極端な重量にならなければ大丈夫だと思います。私の経験上では軽いもので250kg程度、重くても500kgまでなら工場への設置なら大丈夫でしょう。それ以上の重さの場合は床面の重量制限は必ず確認した方が良いでしょう。
念のため、常に確認するように心がけておいた方が良いです。
5.使用環境は?
(屋内、屋外、閉鎖、防塵、防水、温度)
使用環境によって筐体の構造を検討しなければなりません。一般的に制御盤の設置環境で多いのは屋内防塵型です。理由は、制御回路なので粉じんが少なく、温度や湿度が一定に保たれている所のほうが故障する可能性も低くなり、状態良く運用できるからです。
しかし、プラント向けの制御盤や現場の制限などによって、過酷な環境へ設置することもあります。機器と遠くなる場合や設置場所がない場合などは屋外に設置したり、粉じんの多い場所へ設置することもあります。
南国だと温度、湿度、潮風等による耐塩処理も考えておかなければなりません。特殊な装置だと腐食性ガスへの対応もあります。防爆といって、電気的な火花等による爆発を起こさないような材料や構造で設計するものもあります。
また、温度に関しては盤内を冷却するために熱計算書の提出を義務付けられる場合もあります。盤内の温度が高くなり過ぎると機器の使用環境範囲を超えて故障率が格段に上がってしまうことから、温度は許容範囲であることを計算書で示す必要があるからです。
熱計算書を求められた場合には「制御盤製作における熱計算書(ファン必要風量計算)の作成手順(フォーマットあり)」のページに説明と熱計算書のフォーマットを用意してありますので参考にしてみてください。
使用環境の条件について、よく客先へ確認しておきましょう。
6.基台(ベース)の有無は?
(基台の有無、有の時の基台高さ)
制御盤を製作する場合、基台(ベース)を設置することが多いです。既存の制御盤との入れ替えだったりする場合には、既存の基台を流用することもあります。
また、制御盤の高さ寸法に基台の高さ寸法が加わったものが実際に設置した後の高さ寸法になります。
要、不要の確認とともに、高さ寸法への影響も踏まえて確認しましょう。
7.塗装の有無は?
様々な環境や使用条件によって塗装の有無や色、また特殊塗装をする場合があります。まずは塗装の有無について確認しましょう。
塗装する場合には、ツヤの度合いを確認しておきましょう。一般的には「ツヤ無」「半ツヤ」「ツヤ有」となります。よく『ツヤ有』を『全ツヤ』(私もつい言ってしまいます)という方がいますが、正確には『ツヤ有』です。
客先が『全ツヤ』と言った時には「ああ、ツヤ有のことだな」と察してあげましょう。
また、特殊環境によっては耐塩塗装等の要求がされる場合もあります。
性能は当然大事ですが、見た目もとても大事です。客先に納得してもらえる見た目にして納品する為にも大事な確認項目です。
8.色は?
(マンセル値や色見本、塗料支給有無など)
色も重要で、特に一般の方へ見える場所になる時などは客先から指定色での塗装をお願いされることもあります。指定色の場合、客先より塗料支給の場合もあります。
ベージュに近い『5Y7/1』(マンセル)という色は制御盤の塗装色としてよく見かけます。他にもクリーム色のようなものや白に近いものも多いです。
一般的にマンセル値での話が多いですが、色見本の支給がある場合もあります。
見た目に関わる部分ですので、確認しておきましょう。
9.電気的容量は?
ここからは電気的な確認になります。
電気的容量は、全体の容量と個別に駆動する機器の容量をそれぞれ確認します。全体容量がすぐに客先から出てこない場合には、個別の容量を確認して、それを合計したものが全体の容量となります。こちらで計算して出してあげると良いでしょう。
見逃しがちな部分としては、制御回路の容量を足さずに全体容量を算出する場合があります。客先から全体容量を確認しても鵜呑みにせず参考程度にして、自分で計算して確認しましょう。
10.制御対象機器はどんなもので、どんな動き?
制御対象機器について、どのようなものを制御して、どのような動きをするのか確認します。モーターを動かして機械を回転させるのか、振動させるようなものなのか、というようなことです。
機械の動きを理解することで、頭の中で装置や対象の機械を想像することができると設計に活かせます。機械の動きが分かれば、自分でもどう制御すれば良いのか考えることが出来ます。考えることが出来れば、客先がどう動かすか迷っている時に提案することも出来ます。そうすれば、客先からも喜ばれること必須です。
ただし、深入りは禁物です。
装置や機械、制御盤は依頼された仕様があって、その要求を満たすように製作します。こちらが提案した内容で製作したらうまく動かなかったので責任を取ってくれと言われても困ってしまいます。装置の専門家ではないのですから、一つの提案として提供し、決定は客先にしてもらうようにします。こうした方がいいと言い切る場合には、根拠があるものにしましょう。
若いうちはあまり装置を見たこともなく経験も少ないのですから、「こんな方法ではいかがですか?」程度に控えめに提案してみましょう。
11.特殊な機器や動作はあるか?
ここまでの確認項目でおおよそ検討が開始出来る条件は整っています。
客先にとっては『普通』という感覚の機器や動作がある場合、聞かれないと説明はありません。相手にとっては『普通』でも、こちらにとっては「特殊」な場合もあります。ここまででの対象機器や動作、その他の項目での不明点は最後に確認しておきましょう。
「知らない」と言ってしまうと見下すような方もいるので「確認させてください」と言って確認しましょう。
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12.ユーザーはどんなものをご所望か?
最後に、客先のニュアンス等によってどんなものを要求したいのか感じ取りましょう。こちらの解釈している内容を最後に全て伝えて、解釈違いがないかを確認します。解釈している内容をそのまま言葉にして伝えれば良いです。
言葉の言い間違い等は別として、ニュアンスが言葉に変わって出てきますから、違う部分があれば客先から指摘があるでしょう。
全ての内容を自分の言葉で確認することによって、お互いに行き違いのない仕事が進められます。
13.さいごに
仕様確認の度に考えて聞いていたのでは、時間もかかるし確認漏れが発生しやすくなります。手順を決めて仕様確認に伺えば確認漏れが少なくなります。「聞いてなかった」「確認するのを忘れてた」などがなくなっていけば、効率もよくなります。
必ずしもこのページに書いてある順番で確認する必要はありません。客先は要求している側ですから、こちらから聞く前にある程度の項目を伝えてくると思います。伝えてきた項目の説明が不十分である場合や、伝えられていない項目を確認すれば大丈夫です。
結果として客先に満足してもらえるように、よく確認して業務を遂行しましょう。
最初の確認が肝心です!