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このページでは、単線結線図(単結:たんけつ)の作成手順と書き方について紹介しています。
初めて単線結線図を作成するとき、何をしていいのか分かる人などいません。
どこから手をつけていいのか分かりませんよね?
このページで単線結線図の作成手順が分かってしまえば、あなたも単線結線図が自分で考えて作成できるようになります。
初めてなのに時間もかからず作成できれば、周りの人たちからも感心されますね。
他の単線結線図の読み方も分かるので、客先との打合せでも困ることはなくなります。
単線結線図を作成する目的をしっかりと理解した上で、基本手順を覚えて単線結線図を作成しましょう。
※単線結線図の読み方は『単線結線図の読み方(見方)、回路記号と良い図面の見極め方』をご覧ください。
目次(概要)
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1.単線結線図の作成目的
単線結線図を作成する目的
- 全体の接続を分かりやすく表現する
- 全体の機器構成を分かりやすく表現する
- 全体と個別機器の電気的容量を一目で分かるようにする
- つまり、電気的な『全体』を分かりやすく表現する
2.受電仕様の確認
装置や制御盤は外部端子から電源を供給してもらうわけですが、これを『受電』と言います。
受電の仕様として、単相または三相のいずれか、電圧は何ボルトか、容量は何アンペアまでなのかを知る必要があります。
受電仕様の確認
- 交流 または 直流
- 単相 または 三相(交流のみ)
- 電圧(V)
- 容量(許容電流値)
仮に以下の仕様を前提とします。
受電仕様
三相 AC200V 100Aまで可能
まずは外部端子を書きます。
外部端子から縦に線を一本引きます。
縦に引いた線には、斜め線を3本書きます。
斜め線の意味は、単線結線図は線一本で接続を表しますが、実際には三本の電線を接続することを表しています。
そして、必ず外部端子の図記号の上に受電仕様を記載しましょう。
記載としては『3Φ AC200V』です。3Φ=三相 です。Φが相、数字はそのままです。
単相の場合には『1Φ』と記載します。
電線2本ですので『2Φ』と記載する方を見かけますが、正しくは『1Φ』と記載します。
間違うと恥ずかしいので、気を付けましょう。
容量は、ブレーカの容量を見れば分かりますので、この時点では記載しません。
また、アース端子を用意しておく必要があります。
送電側がアース線を用意しているかは別として、設けることを前提として設計を進めておいた方がよいでしょう。
ここまでを書いてみると以下のようになります。
3.受電ランプの配置
次に、受電ランプの接続を書きます。
縦に引いた一本の線より右へ線を一本引いてください。
くっついているところは黒丸●をつけてください。
黒丸●は、接続されているという意味です。
引いた線は実際には2本の電線で接続しますので、斜め線を2本書きます。
横に引いた線の先にはヒューズの図記号を記載します。
ヒューズは表示灯側での短絡などから制御盤及び送電側を保護するために使用します。
表示灯の容量はごくわずかですから、3Aもあれば十分です。
私の場合はAC200Vという電圧を考慮して、栓型ヒューズを使用します。
ヒューズの図記号の上か下に回路記号と容量値を記載しましょう。
今回の場合、ヒューズは2つ配置しますので回路記号は『F1』『F2』と記載し、『3A』の記載をしましょう。
さらに、表示灯用の変圧器を接続します。
制御盤の盤面(盤の表面)に配置する機器には高い電圧は禁物です。
基本的にはAC/DC42V以下が望ましいでしょう。
私はよくIDEC製の表示灯を使用しています。
IDEC製の表示灯用変圧器を配置して『AC200V→AC6V』に変圧して使用します。
変圧器の図記号を書いたら、上か下に回路記号と変圧器の仕様を記載します。
今回の場合はIDEC製のTWR526を使用することを想定しています。
回路記号『LTR0』
仕様『200V/6V』
さらに横に線を引きます。
線の先には表示灯の図記号と色を記載します。
一般的には受電はW(白色)を使用します。
表示灯の図記号の上か下に回路記号、意味、横に色を記載します。
回路記号『PL0』
意味『受電』
色『W』
ここまでを書いてみると以下のようになります。
4.主ブレーカの配置
次に主ブレーカを配置していきます。
主ブレーカが配置されていない制御盤も古い設計のもので見かけます。
メンテナンス時に主ブレーカがないことで分配した先のブレーカが壊れた際に、送電しているブレーカをOFFしない限り交換できない状況に陥ります。
主ブレーカがあれば、主ブレーカをOFFして交換作業ができます。
先々のことを考えると設置した方がいいのは間違いないです。
主ブレーカを配置することで進めていきます。
最初に引いた縦の線の先にブレーカ(遮断器)の図記号を書いて、横に回路記号と仕様を記載します。
ブレーカの仕様としては『3極』『100Aトリップ(仮)』とします。
現状では詳細な容量値はこの時点では不明ですので、仮に100A(送電側の容量値)を記載しておきます。
この時点で分かっている場合は、その容量値を記載しましょう。
ブレーカにはフレームサイズというものがあります。
フレームサイズが大きくなると、遮断容量が大きくなります。
簡単に説明すると、大きな電流が上流から下流、逆に下流から上流へ流れ込むのを防ぐ容量値と考えてください。
大きければ大きいほど良いと思いますが、制御盤には大きさという制限があります。
大きければいいというわけではありませんので適正な大きさを選定しましょう。
ブレーカについては以下のリンクよりブレーカの部品選定ページをご覧ください。
ここまでを書いてみると以下のようになります。
5.分配先の対象機器仕様の確認
次に対象機器(負荷)について確認します。
対象機器はどのようなものがいくつあるのか、容量はどのくらいかを確認します。
今回の場合は以下の設定とします。
・モーター1
容量:7.5kW
数量:1
・モーター2、3
容量:1.5kW
数量:2
・ヒーター
容量:2kW
数量:1
対象機器がどのようなものがあり、どのくらいの容量の機器がいくつあるか分かりましたね。
6.対象機器の制御方法の確認
対象機器の数量、容量が分かったところで、次はどのように制御するかを確認します。
今回の場合は以下の設定とします。
・モーター1
制御方法:機器付属の手元スイッチによる制御
必要な制御機器:ノーヒューズブレーカ
・モーター2、3
制御方法:制御は制御盤の押しボタンスイッチによるON/OFF制御
必要な制御機器:漏電ブレーカ、電磁開閉器
・ヒーター
制御方法:スイッチと温度調節計によるON/OFF制御
必要な制御機器:漏電ブレーカ、電磁接触器、温度調節計
これで制御方法と必要な制御機器が分かりました。
7.分配先のブレーカ、電磁開閉器等の制御機器の配置
制御方法が分かったところで、次は必要な制御機器の配置を考えていきます。
まずはブレーカの配置です。
ブレーカにはいくつか種類がありますが、今回はノーヒューズブレーカと漏電ブレーカを使用します。
ノーヒューズブレーカはその名の通り、ヒューズではなく電流値を監視して過電流を検知したら遮断します。
漏電ブレーカにはノーヒューズブレーカの遮断機能に加えて、流れ出て行く電流と戻ってくる電流の差を監視しています。
設定された以上の電流の差が発生した場合に遮断する機能があります。
電流の差の設定を感度電流といって、15mA、30mA、100、200、500mAの切替式などがあります。
今回は、モーター1は電源送りのみで漏電検知の必要性がないもの、モーター2と3、ヒーターは漏電検知の必要があるものとします。
漏電ブレーカの感度電流は全て30mAの設定とします。
また、各ブレーカのトリップ値は以下の通りとします。
モーター1:50A
モーター2:20A
モーター3:20A
ヒーター:30A
次に電磁開閉器と電磁接触器の違いを説明します。
電磁開閉器は信号でON/OFFできる有接点の制御機器です。
過電流を検知するサーマルリレーが付属しており、過電流検知の接点を使用して電磁開閉器をOFFさせたり、過電流異常を監視したりすることが出来ます。
電磁接触器は、電磁開閉器のサーマルリレーが無いものになります。
ON/OFFの制御のみしたい場合に使用します。
今回はモーター2と3に電磁開閉器を使用して、ヒーターは電磁接触器を使用することとします。
また、全ての機器はアース端子が付属していることを前提として、全ての機器に対してアースの接続用端子を用意します。
電磁接触器、開閉器については以下のページをご覧ください。
制御盤製作時の部品選定(電磁開閉器、接触器、ソリッドステートリレー)ここまでを書いてみると以下のようになります。
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8.制御電源仕様の確認
ここまでで対象機器の仕様については確定しました。
あと残すは制御電源の仕様です。
制御電源仕様
制御電源はAC200Vでも問題ありません。
しかし、高い電圧を引き回すのは電線が切れて漏電した時のことを考えると、あまりよくありません。
そこで、制御電源としては電圧を下げる回路を設けます。
これを降圧と言います。
今回はAC200VをAC100Vに降圧するために変圧器を配置します。
変圧器の容量は1kVAとします。
PLCやリレーなどの制御回路には、降圧した制御電源のAC100Vを電源供給します。
さらに信号用としてDC電源を設置してDC24Vを使用出来るようにします。
主ブレーカ容量の見直し
ここまでで全ての機器の電気的容量が明らかになりました。
ここで最初に仮で決めていた主ブレーカのトリップ値を見直します。
対象機器の負荷容量を全て足すと「12.5kW」です。
制御電源はAC100Vに降圧するための変圧器の容量が1kVAです。
今回の場合では約14kWの電力が必要ですので、AC200Vだと約50A程度の電流値になります。
機器が動き出す場合には突入電流といって大きな電流が短い時間ですが流れます。
突入電流を考慮してトリップ値を決めるとなると、大体100A程度がよいことになります。
内線規程では、電路はブレーカ定格容量の80%以上を超えないようにすることが書かれています。
ブレーカ定格容量が『100A』で80%だと『80A』です。
実際には『50A』の電流値となるので80%の『80A』は超えないですね。
『100A』で問題なさそうですから、最初に仮で決めた『100A』のままとします。
ここまでを書くと、ようやく単線結線図が完成します。
9.さいごに
単線結線図は簡潔に分かりやすく接続を表現するためのものです。
一目で分かること、接続が分かりやすいことが求められるものですので、あまり補足情報で埋め尽くさないように気をつけましょう。
例で挙げている部品の選定も、各会社ごとにルール、基準が違います。
自分の勤め先の得意なメーカーがあると思いますので、上司や同僚などに確認して進めてください。
設計に関する知識として、資格取得に挑戦してみるという手もあります。
『電気のおすすめ資格一覧と難易度について』を参考に資格に挑戦してみるのもいいかもしれませんね。
知識を積み重ねて、人に親切で分かりやすい図面を書いていきましょう。
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展開接続図(主回路)の作成手順(書き方)