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このページではインバータの仕組み、使用する目的と得られる効果についてご紹介しています。
最近ではエアコンや洗濯機などに『インバータ搭載』などの文字を見かけることが多くなりました。
あなたが利用している家電や電車などにもインバータは採用されています。
身近な存在になったインバータですが、電気制御設計においても産業用インバータを選定して使用することが多々あります。
ところで、インバータの仕組みは理解できていますか?
なんでインバータを選定するか、目的や得られる効果は分かっていますか?
制御の仕事に数年携わっていると、今さら聞けないことってありますよね。
そんなあなたのために、仕組みから説明します。
このページでインバータについて理解して、設計に役立ててください。
目次(概要)
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1.インバータの仕組み
インバータは任意の周波数に変えて出力することができます。
どのように変換されて出力されるのか、インバータの仕組みを理解しておきましょう。
以下の概略図をもとに説明をしていきます。
入力された交流を直流に変えている
図のように、入力された交流電圧をコンバータで整流します。
交流は正弦波(波を打つような波形)であり、それをコンバータで整流して山が並んでいるような波形に変換します。
山が並んだような波形の状態ではまだ直流とは言えないので、平滑回路(コンデンサ)で一定の直流電圧に変換します。
ここまでで直流に変換することが出来ました。
直流から交流に変えることで周波数を制御できる
つぎに直流電圧を交流電圧に変えます。
直流から交流に変える回路をインバータ回路と言います。
PWM制御(Pulse Width Modulation)というパルス幅を変える回路を制御することで周波数を自在に変えることができます。
インバータ回路を通して出力される電圧は小さなパルス幅の連続です。
正弦波のように+側にもー側にもパルス幅を調整した連続パルスを出力することで、周波数を制御しながら交流電圧を出力しています。
交流⇒直流⇒交流と作り変えることでロスが生まれる
インバータ内部では任意の周波数に変えて交流電圧を出力することができます。
制御をしている以上、内部の回路に電気が流れるため発熱があります。
電線にも抵抗値があるように、内部回路の至る所にも抵抗値は存在します。
直流⇒交流と作り変える過程でスイッチングでパルスを作り出すため、ON-OFF時にいくらかの抵抗があるためにエネルギーロスが発生します。
抵抗を通過する際に幾らかのエネルギーは熱に変換されて発熱します。
電気が抵抗を流れることで発熱するので、複雑な内部回路、大容量を扱う制御機器は発熱量が大きくなりやすいです。
私がよく使用する三菱電機製のインバータは100%負荷のときに効率95%と謳っています。
参考 インバータのロス|よくある質問三菱電機 FAエネルギーロスがあったとしても他の制御方法より効率がよいので家電やその他機器に採用されています。
注意すべき点として、たった5%のロス(=発熱)でも容量が大きくなれば絶対値も大きくなります。
大きな容量のインバータを使用するときには発熱量にも注意して設計する必要があります。
インバータは熱対策必須の部品ですので、必ず熱計算をしましょう。
盤設計をする際には、以下のページで熱計算をしてみるといいですよ。
インバータの仕組みのまとめ
少し粗い説明ではありますが、インバータは上記のような原理で制御しています。
以下に要点をまとめました。
インバータの仕組み
- 入力された交流電圧を任意の周波数で出力する
- 交流をコンバータ回路で整流する
- 整流したあと、平滑回路で直流にする
- 直流をPWM制御で任意の周波数の交流電圧にする
- 発熱があるので必ず熱計算、冷却を考慮する
2.どんな時にインバータを使うのか
インバータの仕組みが分かったところで、なぜインバータを使うのか知っていますか?
どんな理由でインバータを使うのかを説明します。
速度制御をしたいとき
三相モーターやポンプを運転、停止するような制御をするとき、電磁開閉器(接触器)でON-OFF制御をすることがあります。
電磁開閉器(接触器)で制御すると、100%出力での運転か、停止するかのどちらかしかありません。
インバータで制御すると、任意の設定周波数で出力することが可能となります。
任意の周波数で制御できるということは、100%の出力だけではなく、30%や50%の出力も可能ですね。
車で言えば、スイッチでアクセル操作していたのを踏み具合で速度を制御できるアクセルペダルに変えたような状態。
ポンプで水を送っていたならば、インバータで送る量を制御することが出来るわけですね。
周波数をプログラムで自在に変化させれば、常に最適な周波数で運転することもできます。
周波数を制御してモーターやポンプの速度を制御すれば、制御できる範囲も広がりますね。
省エネ(節電)対策として
速度制御のところで前述したように、電磁開閉器(接触器)でモーターなどを制御すると100%出力か停止のいずれかです。
電磁開閉器(接触器)をインバータに変えて、周波数を制御して回転させるとしたらどうでしょうか?
50%の回転ならば、エネルギーロスを考慮しても電磁開閉器(接触器)で制御するより少ない電力消費になります。
車を運転する人は、常にアクセル全開で運転しませんよね?
加速したい時にアクセルを踏み込んで、燃費よく走りたいときはあまりアクセルを踏まないで運転していると思います。
車と同じように、常に全開ではなく回転数をコントロールすることで電力消費を抑えて省エネ効果が得られます。
必要な分だけ出力すれば、モーターやポンプの寿命も長くなって消費電力も抑えられて経済的ですね。
インバータの選定はどうするの?
インバータは選定の際に注意する点があります。
電圧、出力容量は仕様として選ぶので間違うことは少ないでしょう。
選ぶ際に大きさや熱処理について検討する必要があります。
以下のページに選定についてまとめていますのでご覧ください。
3.インバータを使用する具体例
インバータの仕組みや使用する目的を前述しました。
実際に使用するときはどんな用途で使うのか、具体例を挙げてみましょう。
コンベヤの速度制御
インバータで速度制御をする具体例として、コンベヤでの速度制御があります。
コンベヤの上に何か載せたものを運ぶときに、全速力で運ぶことはほとんどないですよね。
速すぎるとワークがどこかに飛んでいってしまうかもしれません。
載せているワークの状態に合わせて、必要な速度で運ぶ必要があります。
インバータで周波数を設定してコンベアを制御すれば、必要な速度で運ぶことができます。
エアコンの速度制御
次の具体例としてはエアコン。
エアコンは温度設定をすれば、自動で温度と風量を調節してくれますよね。
エアコンの風量も速度制御の一部。
最近のエアコン売り場では『インバータ搭載』なんて文字をよく見かけるようになりました。
必要な風量を送り出すために羽の回転数をインバータの速度制御で風量コントロールしています。
重量物を動かすための制御動力として
橋型クレーンなどの制御もインバータで制御していることが多いです。
古いものは電磁接触器で制御していましたが、最近ではインバータで制御しています。
軽量なものを動かすのであれば、ステッピングモーターなどで動かしても問題ありません。
しかし、橋型クレーンのような重量物ともなると、ステッピングモーターやサーボモーターではパワー不足の感が否めません。
精度の高い位置制御でなければ、インバータ制御で事足ります。
エンコーダーなどでパルスを拾えば、ある程度の位置制御も可能です。
インバータは大きな容量までラインナップされています。
重量物で精度の高い位置制御がなければ、インバータで制御することが可能です。
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4.インバータを使った設計時に注意すること
インバータを使用して、いざ設計をするぞ!という時に注意してもらいたいことがあります。
それは…
インバータの動力1次側に電磁接触器を入れるかどうかです。
インバータを販売しているメーカーのカタログやマニュアルには、1次側に電磁接触器を入れることを推奨しています。
なぜ推奨しているか、あなたは知っていますか?
もし知らないという方は、以下のページでまとめていますのでご覧ください。
知っているのと知らないで設計するのでは大きな違いがありますよ。
5.さいごに
最近ではいろんなものにインバータが搭載されています。
電車や家電にも搭載されて、省エネ効果と速度制御で社会に貢献してくれていますね。
このページでインバータの仕組みや使用する目的、用途、具体例まで紹介しました。
これであなたもインバータについて少し詳しくなりましたね。
インバータは電磁開閉器(接触器)に比べると高価です。
使用用途や予算に合わせて、適切に選んでいきたいところです。
制御対象となる負荷に合わせて電磁開閉器(接触器)とインバータを使い分けるといいですよ。