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このページでは、電子サーモ(盤用温度調節器)の設置場所が悪いことで換気ファンが動作しないトラブル事例について書いています。
ある時、制御盤に設置していたDC電源が納入してわずか4か月程度で故障するということがありました。メーカーからの調査結果では、原因は『熱による故障』でした。
制御盤には換気ファンがついていて、電子サーモ(盤用温度調節器)で温度監視しており、制御盤内が熱くなればファンが動くようにしていました。
なぜ故障してしまったのか。それは、電子サーモの取り付け位置に原因がありました。
あなたも同じミスをしないように、このページで原因と対策を理解して自分の設計に活かしてくださいね。
故障発生までの経緯、原因や推察される予防策について紹介します。
目次(概要)
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1.換気ファンが動かない
納入したばかりの制御盤に設置されていたDC電源が1年経たずに故障してしまいました。故障発生までの経緯について説明します。
1-1.制御盤を制作して納入
ある得意先からの制御盤の製作依頼があり、工場での立会検査を実施してから出荷しました。当然ですが検査項目は全て問題ないことを確認して出荷。
納入先の工場に設置されたあとの現地調整作業も無事に終わり、実際に制御盤は運用され始めました。
1-2.突然の得意先から「動かない」という連絡
残暑の厳しい時期、得意先からの連絡がありました。内容は「制御盤が動かないので、至急見てほしい」というものでした。よく聞いてみると、DC電源が壊れているかもしれないとのこと。
会社にあったテスト用に使用している同容量のDC電源を持って、工場へ向かいました。
1-3.DC電源が出力しない
工場について制御盤の扉を開けると、もわっとした熱い空気が扉を開けた瞬間に顔の近くを通りすぎました。盤内をよく見てみると、DC電源はインジケーター(電源ONの表示ランプ)も消えていて、動いていないことが分かりました。
仮処置として持参したDC電源と交換し、動作確認をしてからしばらく立ち会いました。その後、問題なく動作していることを確認して工場を後にしました。
1-4.なぜDC電源は故障したのか
故障したDC電源はまだ4ヶ月の使用のみ。持ち帰って原因調査をメーカーへ依頼することにしました。
しかし、なぜDC電源は故障したのでしょうか。
2.使用して4ヶ月のDC電源が故障した原因は?
たった4ヶ月の使用で機器が故障することはありえません。一体何が起きたのでしょうか?
現場状況や現場での調査で明らかになったことを説明します。
2-1.盤内は熱くなっていた
工場について制御盤の扉を開けたとき、熱い空気が出てきました。これは、制御盤の内部が熱くなっていた証拠です。
制御盤が設置されていた場所は比較的暑い場所ではありましたが、換気ファンが動いていれば周囲と同じ程度の温度になっていたはず。
換気ファンの動作に不安を感じたため、念のために電子サーモ(盤用温度調節器)を操作して動作の確認をしてみました。
すると、温度設定を最低値にしないと動作しなかったのです。
2-2.その時の状況から推測できる原因
制御盤は以下の図1のように中板、吸気フィルタ、換気ファンが設置されていました。
図1
そして、電子サーモは図2の赤い四角のところに設置されていたのです。
図2
空気は暖められると上へ移動します。下側には冷たい空気があります。
電子サーモの設置された場所は温度の上昇が少ない場所です。温度が上昇して換気ファンが動作したとしても、すぐに冷たい空気が吸気フィルタから入ってきて電子サーモの周辺はすぐに冷えます。
電子サーモが冷えれば、すぐに換気ファンは止まってしまいます。結果として、制御盤の中はあまり換気されることなく熱い空気が溜まってしまう状態になっていました。
おそらくDC電源も熱によって故障したものと推測できます。
2-3.DC電源の故障原因は温度上昇によるものだった
DC電源の故障原因を調査依頼して1週間後、メーカーより調査結果の回答が届きました。原因は推測通り『温度上昇による電子部品の故障』によるものでした。
やはり原因としては換気ファンが動作しないことで制御盤内の温度上昇したことが原因でした。
やはり制御盤の換気はとても大事ですね。盤内には大きな熱の発生源はなく、故障したDC電源が1番熱を発生するもの。
大した熱の発生はなくとも、設置場所などを考慮して換気ファンを設置した方がいいんだなと学べました。
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3.制御機器を熱で壊さないための予防策
換気ファンが動作しないことで故障してしまったDC電源。その後、新しいものを購入して交換しました。
そもそも、このような故障を発生させないための予防策が必要です。
3-1.故障原因は換気ファンの不動作と電子サーモの設置場所
このトラブル事例の主な原因は何でしょうか?
換気ファンが動作していれば排熱が行われて盤内温度も大きく上昇することもなかったでしょう。そして、その温度を検知している電子サーモの設置場所が悪いために、換気ファンが動作しなかったことが主な原因です。
換気ファンを適度に動作させるような電子サーモの設置場所はどこがてきしt適していたでしょうか?
3-2.電子サーモ(盤用温度調節器)は上部の風が当たらない場所に
2-2項にある図2を見ると分かるように、電子サーモが盤の下部に設置されていては、常に盤の1番冷たい空気のある温度を検知してしまいます。検知したい温度は、盤内での1番高い温度ですよね?
そのためには、以下の図の場所に設置するのが最適です。
図3
電子サーモの最適な設置条件は以下の通りです。
・風の通り道ではない場所
・盤内で1番温度の高い場所の近く
図2では、吸気フィルタの目の前に電子サーモがありました。ダクトで覆われて風が当たりにくいとは言っても、目の前なら多少の風は当たっているでしょう。
これでは風が入ってくるとすぐに冷やされて『適正温度』と判断してしまい、換気ファンもほとんど動作しなくなってしまいます。
また、制御機器のほとんどは上限50度以下での使用条件となっています。制御盤の中で1番温度の高い場所の機器を守るためには、その場所の温度が上がらないようにしなければなりません。
そのためには、制御盤の上部の暖まった空気の温度を検知する必要があります。
図3の電子サーモの設置場所であれば『風が当たらない』『盤上部の温度を検知』という条件に当てはまります。ここであれば『温度上昇』を検知して換気ファンを動かして『適正温度』になったらファンが停止する、という最適な動作になります。
その他の部品配置も盤内の温度上昇には影響があります。
内部配置については『制御盤製作時の内部配置の検討手順』をご覧ください。
4.さいごに
私が若いころにやってしまったトラブル事例を紹介しました。
この失敗を2年目のころにやらかしましたが、そのおかげで同じ失敗はしなくなりました。
やはり若い時の失敗はムダにはならず、自分の知識や知恵となって今も生きています。しかし、自分で失敗しなくともこのページで失敗の疑似体験をしておけば、それは知識や知恵となります。
すでに先人の犯した失敗と同じことをわざわざする必要はありませんので、このトラブル事例をあなたの設計に活かしてくださいね。
あなたの知識のひとつとしてお役に立てば幸いです。