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今回は最近のモーター事情とサーマルリレーの種類。プレミアム効率モーター使用時のサーマルリレーの選定について紹介します。
電気制御の設計をされている方はモーターやポンプに疎い方も多く見かけます。
私も制御設計の人間ですので、メカ関連のものは詳しくありません。
設計するとき、あなたは通常型のサーマルリレーを何気なく選定していませんか?
そのままだと運転できないかもしれません。
最近のモーター事情とサーマルリレー種類について理解しておけばバッチリ選定できます。
おさえておきたいポイントを絞って説明しますのでご覧ください。
目次(概要)
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1.プレミアム効率モーターってなに?
最近のモーター事情
三相誘導電動機、一般的にはモーターと呼ばれていますが、世界の消費電力の約50%はモーターによるものだと知っていますか?
言い換えれば、モーターの効率が良くなれば世界の消費電力を抑えられるということ。
そして1979年に省エネ法が制定され、規制を加えて効率のよい機器の開発を促しています。
メーカーは消費電力を抑えたモーターを開発するために研究しています。
最近は、今までのモーターよりも効率よく出力できるプレミアム効率モーターというものが販売されています。
モーターの規格
モーターはIEC規格で定められた規格で呼ばれることが多いです。
・IE1モーター(標準効率)
・IE2モーター(高効率)
・IE3モーター(プレミアム効率)
前述したように、最近はプレミアム効率モーター(IE3モーター)が販売されています。
省エネ法の規制によって、従来品のモーターは販売できません。
効率が良くなっているのは名称を見ても分かりますが、実はモーターの規格によって特性の違いがあります。
IE3モーターは始動電流増加
IE 3プレミアム効率モータは始動電流(突入電流)と定格電流が増加しています。
これはモーターの出力を効率よくするため、トルクが増加しているからです。
また、モーターの回転速度も従来のIE1、IE2モーターよりも速くなっています。
損失を抑えて効率よく出力するためです。
従来品からの交換の際は注意が必要です。
『急に回転速度が上がった』『電流値が増えてトリップしてしまう』等の問題が発生する可能性があります。
特性の違いを理解した上で交換をする必要があるでしょう。
2.サーマルリレーってなに?
サーマルリレーとは
サーマルリレーは、過電流が流れたときに接点が働くリレーのことです。『サーマル=熱』の通り、過電流によって内部にある金属が過熱されて接点を動かします。
負荷回路において過電流を検知してモーターを保護するために使用します。
サーマルリレーは電磁接触器と組み合わせて使用することが多いです。
電磁接触器と一体型のものは電磁開閉器と呼びます。
電磁接触器、開閉器の選定については『制御盤製作時の部品選定(電磁開閉器、接触器、ソリッドステートリレー)』をご覧ください。
サーマルリレーの種類
サーマルリレーにはいくつか種類があります。
・過負荷保護形(2素子、3素子)
・遅動形(飽和リアクトル付き)
・速動形
一般的なものとして過負荷保護形(2素子付)が多く使われています。
価格が比較的安価なこともよく使われる理由のひとつです。
モーターへの適用
サーマルリレーは種類によって適用されるモーターが違います。
〇過負荷保護形
・一般的な負荷
〇遅動形
・始動電流の大きいモーター
・始動時間の長いモーター
・開閉頻度(運転、停止)の多い負荷
〇速動形
・水中モーター
・コンプレッサー用モーター
・その他、過電流から即座に保護したいとき
電磁接触器とセットで使われる
サーマルリレーは電磁接触器とセットで使用されることが多いです。電磁接触器とサーマルリレーが一体となっているものを電磁開閉器といいます。
電磁開閉器の選定については『制御盤製作時の部品選定(電磁開閉器、接触器、ソリッドステートリレー)』をご覧ください。
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3.IE3モーターへのサーマルリレーの選定
IE3モーターの販売が進められている
前述した通り、省エネ法関連の規制によって従来のモーターは販売されていません。エネルギー消費を抑えるために、特定機器の製造メーカーの機器開発を促していく目的があります。
2018年時点で販売されているモーターはIE3モーターです。
IE3モーターには遅動形を選定する
従来のIE1、IE2モーターには過負荷保護形のサーマルリレーが使われてきました。
サーマルリレーの中では2素子付のサーマルリレーは最も安価です。
IE3プレミアム効率モーターに過負荷保護形のサーマルリレーを選定するとどうなるでしょうか。
始動してすぐにサーマルリレーがトリップします。
前述したように、IE 3プレミアム効率モータは始動電流(突入電流)と定格電流が増加しているからです。
過負荷保護形のサーマルリレーではモーターの容量値で選定すると、始動時間が長くなっている、始動電流が大きいのでトリップしてしまうのです。
サーマルリレーの種類で書いた通り、IE3モーターは遅動形の選定が適したモーター特性であるからです。
〇遅動形
・始動電流の大きいモーター
・始動時間の長いモーター
・開閉頻度(運転、停止)の多い負荷
よって
IE3モーターには遅動形のサーマルリレーが最適です。
間違えないように注意しましょう。
4.さいごに
今後もモーターなどの機器は効率よくなっていくことでしょう。その都度、電気設計も含めて見直しをする必要があります。
見直しをしないでモーターを交換したり、設計したりすると運転できなくなる事態を招く恐れがあります。
実際にIE3モーターに交換したことで運転できなくなってしまったお客様から、助けてほしいと連絡をいただいてサーマルリレーを交換したことがあります。
このような事態を招かないためにも、新しい情報に気を配って設計に反映していきましょう。