制御盤の検査要領書の作成手順

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ここでは、制御盤の製作時における検査要領書の作成手順を紹介します。

ここ近年では制御盤を製作する際に、検査要領書と成績書の提出を義務付ける案件が多くなってきています。小さな企業であっても、大きな企業から仕事をいただくには、それ相応の対応が出来ないと仕事が回ってきません。

フォーマットを自社で持っていれば対応できますが、初めての作成だと何を書けばよいのかわかりませんよね。検査要領書の作成手順を覚えれば、今後の案件も楽に対応できるようになります。

※動作試験(シーケンス試験)については除いています。別の記事として作成予定です。

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1. 検査要領書ってなに?

検査要領書ってなに?

 

検査要領書とは何かという定義の部分を理解しておきましょう。

言葉を分解すると『検査』をするための『要領書』となります。『要領書』は、何をどうやっていくのか全体の内容を表す書面という意味になります。同じような意味の言葉として『手順書』がありますが、『要領書』の一部として、より細かく一つ一つの作業順序を示したものが『手順書』となります。

要領書の作成内容で表現に困ったときなどに目的からずれた表現となってしまうことがあるのは、ここを理解していないことが原因になっている場合が多いです。

検査要領書には、制御盤に関わる検査内容をどのように検査するかを示します。検査内容はある程度の分類で分けて、各検査項目として記載します。

検査内容の基準として、どの範囲であれば合格とするのか、合格範囲の根拠を示します。数値の範囲、または合格基準となる程度を明確に記載し、参考にした規格類を合格範囲の根拠として示すのが一般的なフォーマットです。

 

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2. 検査要領書の検査項目の目的、内容と検査基準

検査要領書の検査項目の目的、内容と検査基準

 

検査要領書には各検査項目ごとに検査内容と検査基準を記載します。まずはどんな項目があるのか知らなければなりません。また、各検査項目の合格範囲となる数値や程度の基準となる根拠も把握しておく必要があります。

各検査項目と検査内容、基準について説明します。

 

2-1.外観検査

 

〇目的と内容

制御盤は、客先より承認をいただいた外観図、配置図(=承認図)をもとに製作します。承認図と違う部分があれば、それは仕様を満たしていないことになります。承認図と同じ外観、配置となっているか、確認する検査項目です。

〇検査基準

・承認図と同じ外観、配置となっており、相違ないこと

 

2-2.寸法検査

 

〇目的と内容

制御盤の寸法も外観図に記載されています。工場などの設置場所は、承認図に基づいて設置スペースを用意しています。勝手に大きい寸法にしたり、または小さい寸法になってしまっては、客先も困ってしまいます。図面と同じ寸法であることを寸法検査で確認するため、校正されたノギスやメジャーを使用して測定します。

寸法検査では、規格に基づいて基準内に収まっているかを確認していきます。単独の寸法と、2つ以上のものを組み合わせた寸法では許容値が違うので注意が必要です。例えば、制御盤の奥行寸法を検査するときには、扉を含めると 筐体+扉 の組み合わせ寸法となるので、基準値は組み合わせ寸法で測定します。

また、制御盤の高さ寸法では、筐体だけで測定する時には単独寸法の許容値、ベースも含めた高さを測定するときには組み合わせ寸法としての許容値で検査します。

単独寸法と組み合わせ寸法を間違えないように気を付けましょう。

 

〇検査基準

極祖級(V級)

寸法 許容値
枠(単独) 組合せ
3を超え6以下 ±0.5
6を超え30以下 ±1
30を超え120以下  ±1.5
120を超え400以下  ±2  ±3
400を超え1000以下  ±2  ±4
1000を超え2000以下  ±3  ±6
2000を超え4000以下  ±4  ±8
4000を超え8000以下  ±10

※「JIS B 0405」及び「JEM1459-2013」より引用
※単位は全て「mm」

 

2-3.塗装検査

 

〇目的と内容

制御盤の製作時には、仕様書で塗装色に関する指定が記載されていることがほとんどです。仕様書に指定されていた塗装色と同じ色であるかを検査するのが塗装検査となります。仕様書で指定がなかったとしても、外観図にも塗装色を記載していると思いますので、記載された塗装色と同じ色で塗られているか確認します。

確認方法としては、指定された色と同じであることを証明するために色見本というものを使用します。色見本を実際に盤にあててみて、色味に差がないかを確認します。日本塗料工業会(略して日塗工、JPMA)の標準色見本帳を使用するところがほとんどです。

制御盤でよく使用する色としては 日塗工色見本番号:25-70B(マンセル:5Y7/1) がよく見る色です。自社でよく使用される色味の色見本は持っておくとよいでしょう。

 

〇検査基準

・指定色の色見本と相違がないこと

 

2-4.膜厚検査

 

〇目的と内容

塗装検査と何がちがうの?と思われる方も多いのですが、塗装検査は色の差がないことを検査する項目であり、こちらは塗装の厚み(塗膜の厚さ)を検査する項目です。

制御盤は長年使用することが多いので、近年では膜厚検査が必要な機会が増えています。塗膜が薄いと、設置場所にもよりますが早ければ数年で錆びてきてしまいます。塗膜の厚さはある程度なければ長年の使用に耐えれませんので、しっかりと塗膜の厚みがあることを検査で確認します。

膜厚検査は膜厚計を使用して測定します。膜厚計も安いものから高いものまでありますが、校正が可能なものを選んでおけば問題ありません。検査に使用する測定機器は校正証明書がつきものです。『高い』『安い』ではなく、『校正ができるもの』という基準で選ぶとよいでしょう。

また、膜厚検査をする頻度が少ない時には、レンタルするということも可能ですので、校正証明書つきの測定器をレンタルしましょう。

実は、塗膜の厚みについては規格類による明確な基準が設けられていません。一般的には、制御盤の内側は40μm、外側は60μmの厚みが必要となると言われています。私の勤め先でも、この基準値で検査をしています。塗料メーカー毎に仕様が違うために、まとめられなかったような話も聞きますが、真実は定かではありません。

『一般的な仕様』という曖昧な基準ではありますが、実績としてこの基準ですぐに錆びてしまうことも今までなく、他のメーカーでも同じ基準で検査しているようですので、しばらくはこの基準だと思われます。

〇検査基準

・膜厚計により、基準値以上の膜厚があることを確認する
・測定箇所は、各面において3か所以上を測定した最低値を記録とする

 

2-5.機器照合検査

 

〇目的と内容

ここからは筐体ではなく制御機器などの電気的部分の検査になります。

機器照合検査は、配置図、部品表、展開接続図(いずれも承認図)に記載のある部品が全て図面通りになっていることを確認する検査です。外観図に記載のある銘板の文言が図面通りであることも確認します。

部品の回路記号や型式が実物と違うことで指摘を受けることもあります。立会い検査がある場合には、事前に自分でリハーサルして確認しておきましょう。

〇検査基準

・各部品の配置が配置図と相違ないこと
・各部品の型式が部品表と相違ないこと
・銘板の名称が外観図(銘板の文言が全て記載されている図面)と相違ないこと

 

2-6.配線検査

 

〇目的と内容

配線検査は展開接続図通りに接続されているか確認する検査です。立会検査では実施した結果を示すことはあっても、実際に検査をすることは今まで一度もないです。配線検査が終わっていることを前提に立会検査が始まることが一般的です。

配線検査用の展開接続図を用意して、すべての配線を塗りつぶして確認したものを用意する必要があることも時々ありますので、事前に客先へ確認しておくとよいかもしれません。

〇検査基準

・配線接続が展開接続図と相違ないこと

 

2-7.絶縁抵抗測定検査(耐電圧試験)

 

〇目的と内容

絶縁抵抗測定検査は、筐体アースと電線の間に一定の電圧をかけて絶縁抵抗を測定する検査です。電線に傷などがあって被覆が破れていると、電線に高い電圧がかかった際に筐体などの金属とつながってしまいます。筐体アースと電線の間で抵抗値が低くなり、電気が流れやすくなる状態となっていないかを絶縁抵抗を測定して検査します。

耐電圧試験は、しっかりと製作物に絶縁が施されているかを確認するために高電圧をかけて、絶縁破壊されないかを確認する試験になります。電線の被覆に傷があったりすると、高電圧をかけた際に絶縁破壊が起きて、絶縁抵抗が低くなります。試験そのものは、回路ごとに決められた試験電圧(高電圧)を1分間かけて、絶縁破壊されないかを確認します。

絶縁抵抗測定は耐電圧試験の前後に実施するのが一般的です。

絶縁抵抗測定(耐電圧試験前) → 耐電圧試験 → 絶縁抵抗測定(耐電圧試験後)

このような順番で実施することで、製作時の絶縁に問題がないこと、耐電圧試験で絶縁破壊されないこと、耐電圧試験後でも絶縁が維持されていることを証明することが出来ます。電線に深い傷があると、その傷から絶縁破壊されることがあるので、制御盤の出荷前には必ず実施しておきましょう。

使用する検査機器としては以下のものが必要です。

・絶縁抵抗計(通称、メガーと呼びます)
・耐電圧試験器

いずれも校正証明書が必要になりますので、あらかじめ準備しておくとよいでしょう。

〇検査基準

絶縁抵抗値の基準値は『電気設備に関する技術基準を定める省令』にて決められている基準値があります。

電路の使用電圧区分 絶縁抵抗値 主な電路
300V以下 対地電圧が
150V以下の場合
0.1MΩ以上 単相2線式100V
単相3線式
100/200V
その他の場合
(150Vを越え300V以下)
0.2MΩ以上 三相200V
300Vを超えるもの 0.4MΩ以上 三相400V

 

しかし、実際にはこの数値ではやや低く、私なりの解釈としては『最低限この基準値は満たしていた方がよい数値』と考えます。

私の勤め先では、メーカー基準値として『10MΩ以上』として、下記のような回路区分で検査しています。

電圧区分 回路区分 メーカー基準値
三相 AC400V 主回路と大地間 10MΩ以上
三相 AC200V
単相3線式
AC100/200V
単相2線式
AC100V
単相3線式
AC100/200V
操作回路と大地間
単相2線式
AC100V
DC24V

 

補足ですが、DC24V回路は実施しないことも多いです。理由は、電圧が低いため危険度も低いからです。客先から指定がない場合には実施しないことが多いです。

続いて、耐電圧試験の印加電圧(回路にかける電圧)の基準です。

電圧区分 回路区分 耐電圧試験内容
三相 AC400V 主回路と大地間 AC2500V
1分間
三相 AC200V AC2000V
1分間
単相3線式
AC100/200V
単相2線式
AC100V
単相3線式
AC100/200V
操作回路と大地間 AC1500V
1分間
単相2線式
AC100V
DC24V

 

2-8.測定機器一覧

 

〇目的と内容

検査項目ではないですが、各検査に使用した試験器、測定器の一覧表を設けておきましょう。

検査は校正された機器で実施しますので、各機器が校正されていることを証明するために校正証明書を提出する必要があります。各機器には管理番号やシリアル番号など、個別の番号が必ずありますので、使用した機器が校正されていることを証明するために、測定には校正された機器の個別番号を記載します。

レンタル機器で検査を実施した場合には、借りるときに必ず校正証明書を添付してもらうように依頼しましょう。

 

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3. 検査要領書作成時の注意点

 

検査要領書は、制御盤などの製作物が『仕様を満たして』おり、『安全に使用できる』ことを証明するためにどのような検査をするかを記載するものです。検査のための検査要領書になっているものを見かけることがありますが、本来の目的からずれてしまっています。目的からずれないように考えて記載しましょう。

また、検査のときには測定結果が基準値内に入っていることで 合格=仕様を満たし、安全に使用できる ことになります。要領書を作成するときも、検査をするときも本来の目的を忘れずに実施すれば、何かあった場合には目的に沿ってどう対処すればいいかを検討できます。

目的からずれて本末転倒になってしまうような記載や対処をしないように気を付けましょう。

 

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4. さいごに

 

検査は制御盤が仕様を満たして安全に使用できる状態に製作してあることを証明するための行為です。しっかりと基準内の数値であることを証明できれば、自社の品質アピールにもつながります。制御盤は長期使用が前提となっていることが多いので、しっかりと基準値内に収まるように製作するように心がけましょう。

しっかりと検査をして、品質面で自社のアピールをして次の仕事につなげていきましょう。