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今回は、PLCの通電試験の目的、手順について紹介します。
制御機器はパラメータ設定やプログラムを書き込んで使うものが多くあります。現場で動かそうとしたときに、パラメータやプログラムが間違っていたりすると動かなくて困ってしまうことがあります。現場で困ったことにならないためにも、事前に通電(電気を投入)して、できる範囲は確認しておくことで前もってパラメータやプログラムの間違いを発見できます。
PLCなどのプログラムを書き込んで使用するものは、この手順を覚えておけば応用して対応できるようになります。
目次(概要)
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1.PLCの通電試験は何のためにするのか(目的)
PLCの通電試験を事前に行う目的はなんでしょうか?大きく分けて2つほどあります。
1-1.事前の通電試験で初期不良がないかを見極める
初期不良は、残念ながらある程度の確率で製品に起きてしまいます。電源を入れたときに壊れてしまったら、関連作業はその場でストップしていまいます。関連作業をフリーズさせないためにも、事前に初期不良を発見して対応することで『予期せぬ初期不良』から『ある程度予期していた初期不良』として扱うことで優位に仕事を進めることができます。
初期不良によるトラブル事例については『インバータに通電して2時間したら焼損!原因は?』をご覧ください。
1-2.パラメータ設定に間違いがないかを確認する
PLCのパラメータでは、入出力ユニットのアドレス設定が間違っていて、違うアドレスがONするということが起きたりします。このような初歩的なミスを見逃さないためにも、事前に通電して入出力信号をONさせて確認すれば間違いを発見できます。
温度調節器などのパラメータ設定がある機器も、事前に通電することでパラメータの間違いを発見できます。設定が間違っているまま誤って出荷してしまったり、確認が進められないことなどを防ぐことができます。
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2.PLCの事前通電試験の手順
PLCへ事前に通電する目的が分かったところで、実際に通電試験をするときの手順はどうすればよいのか、このページを見ている方の知りたいところだと思います。
各手順と注意点について説明します。
2-1.PLCへ電源を接続し、通電する
PLCへ電源を接続します。ほとんどのPLCはAC100~240V対応です。中にはDC24V専用品もありますので、その場合は直流電源を準備して電源を接続します。
通電時には、電圧を確認して正常電圧であることを確認しましょう。通電試験でPLCを壊してしまっては本末転倒ですので、注意しましょう。
また、入出力ユニットなどの制御電源も正常な電圧範囲であるか、確認が必要です。実際の使い方と同じように通電試験を行うことが重要です。本番前のリハーサルですので、リハーサルのリハーサルにならないように使い方と同じように接続することが重要です。
2-2.PLCのCPUをフォーマットする
PLCのCPU内部にはどんなデータが残っているかわかりません。メーカーが出荷前の検査でデータの書き込みテストを行っている可能性もあります。電源投入後には必ずCPUのデータフォーマットを実行して、CPU内部のデータを完全消去しておきましょう。
2-3.CPUにプログラムデータを書き込みする
フォーマットを行ってCPU内部のデータを完全消去しました。次は作成したプログラムデータをCPUへ書き込みます。パラメータデータとプログラムデータの両方を書き込みしましょう。
プログラムデータのみ書き込みしてもパラメータデータがなければプログラムは動作しませんので、パラメータ、プログラムの両方を忘れずに書き込みしましょう。
2-4.PLCのCPUのメモリクリアをする
フォーマットでPLCのCPU内部のデータを完全消去した後に作成したデータを書き込みしました。稀にデータメモリによく分からない”ごみ”のようなデータが入っていることがあります。フォーマットをしても、間違ってデータメモリを書き込みしてしまった場合に”ごみ”のようなデータが入ってしまうことがあります。
自分では気づかずにデータメモリのデータを書き込んでしまったとしても、ここでメモリクリアをしておけば問題ありません。余計なデータをクリアするという意味でも、念のためにここでCPUのメモリクリアを実行しておきましょう。
2-5.PLCで使用するネットワークを接続し、通信状態を確認する
※ネットワーク接続がない場合には、この項目は読み飛ばしてください。
ネットワークによる通信をする場合には、仮のネットワークを構築、接続しましょう。
ここでの確認をするにあたり、作成したプログラムがローカル局の場合は、仮でマスター局用のプログラムを作成しておく必要があります。マスター局用のPLCも同時に準備が必要となります。作成したプログラムがマスター局である場合には、ローカル局にデータが送受信できているかを確認する必要があるので、ローカル局用のPLCも必要になります。
いずれにせよ、ネットワークの通信確認を行うにはPLCは2台必要となりますので、あらかじめ準備して通信確認を行いましょう。
私の勤め先では、試験用に数台のPLCを用意してありますのでいつでも確認できるように準備してあります。もし試験用のPLCがなければ、大きなシステムを構築する案件時などに確認が困難になりますので、どこかのタイミングで用意しておいた方がよいでしょう。
2-6.入出力ユニットのアドレス確認とON/OFF確認をする
設定したパラメータデータによって、入出力ユニットのアドレスが変わります。設定したパラメータデータが正しいか確認するため、各入出力ユニットの先頭、最終の入出力をON/OFFさせてアドレスが正しいことを確認しましょう。
ここで重要なのは『実際と同じ電圧信号で確認する』ということです。実際の電圧で確認することで、設計通りに入出力信号がON/OFFすることを確認できます。もしONしないことがあれば、電圧が間違っているかユニットが故障しているかのどちらかとなりますので、しっかりと確認しておきましょう。
2-7.アナログ入出力ユニットのアドレス確認とレンジ(範囲)確認をする
ここではアナログ入出力ユニットのパラメータ設定が正しいかを確認します。アナログ信号は電圧、電流のいずれか、DC1~5V、DC4~20mAなどの信号レンジ(範囲)の設定が正しいかを確認します。入出力信号はいずれもデジタル値の数値範囲が正しいか確認しておきましょう。もし違えば、パラメータを見直して修正しておきましょう。
3.さいごに
PLCの通電試験の手順について紹介しました。ここで、手順をまとめてみます。
・PLCへ電源を接続し、通電
・CPUフォーマット
・プログラムデータを書き込み
・CPUのメモリクリア
・ネットワークを接続し、通信状態を確認
・入出力ユニットのアドレス確認、ON/OFF確認
・アナログ入出力ユニットのアドレス確認とレンジ(範囲)確認
重要なことは、実際に使う環境に限りなく近い状態で通電試験を行うということです。
プログラム以前に、設定や機器構成が間違っていてはプログラムがいくら合っていても意味がありません。事前に確認しておくことで、プログラムのデバッグ作業に専念できる環境を作れます。一度にすべてを確認するのではなく、それぞれ別々に確認することで無駄な時間を費やしてしまうのを防ぐ目的もあります。
事前確認をする予定を入れて設計を進めていきましょう。