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このページでは制御盤の筐体構造における保護(防塵・防水)構造について紹介しています。
制御盤を初めて筐体の設計をする場合に保護構造と言われてもよく分からないですよね。
設置場所の環境によって防塵・防水性能を持たせた構造設計をする必要があります。
さて、どんな設計をすればいいのか…困ってしまうことがあると思います。
このページを読めば、防塵・防水性能を持たせた制御盤の筐体構造とはどういうものか分かります。
さらに筐体の強度に対するフレーム有無の考え方、水切りの形状についても分かるようになります。
目次(概要)
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1.屋内・屋外で必要な構造は違う
制御盤といっても、使用する場所が屋内か屋外か、温度(おんど)や湿度(しつど)の状態、粉塵の多さによって必要となる構造は変わります。
屋内で使用する制御盤には、ほこり・粉塵などの『異物』が盤内に侵入しないような構造が必要とされます。屋外では、雨にさらされることもあるので、ほこりや粉塵に加えて防水への対策が必要となってきます。
- 屋内:防塵対策のみ
- 屋外:防塵・防水の両方の対策
屋内と屋外では構造面においても防塵、防水への対策を考えて設計する必要があります。
この場合、構造だけでは防ぎきれないので、特殊仕様対応として耐塩塗装や材質をステンレスにするなどの対策が必要です。
2.筐体構造で防塵・防水に対応する
屋内では防塵構造、屋外では防塵・防水構造が必要なことは前述した通りです。
基本的な構造としては防水構造をおすすめします。
防塵構造も防水構造も大きな構造の違いはないこと、設計上も手間としてはほとんど変わらないこと、防水構造であれば防塵対策も高まるという理由からです。
筐体の中と外を貫通するような穴をあける場合には注意が必要です。
熱対策としてフィルターやファンを取付する場合には貫通穴を開けますが、防塵であれば筐体と取付する物の間にパッキンを入れれば防塵性能はあまり下がりません。
防水であれば、取付するものは防水対応であること、パッキンも防水対応のものにする必要があります。
念のため、シリコンなどを使ってシーリング(すきまをふさぐ)した方がよいです。
詳しくは以下のページに記載していますのでご覧ください。
制御盤のIP保護等級について
3.筐体フレーム有無の必要性
筐体製作の際に『フレームの有無』を検討する必要があります。
上の図は、右側が制御盤の正面になり、扉が取り付く面として見てください。
赤丸で囲んでいる斜線の部分がフレームになります。
フレーム構造はL鋼(50mm×50mm または 40mm×40mm、厚さは4mm または 5mm)で筐体周囲のフレームを製作し、フレームのまわりに板を溶接して製作する構造となります。
対して、フレームの無い筐体では鋼板を折り曲げて溶接して製作する構造となります。
フレームの有無による構造上の違い、フレームの必要な場面について説明します。
3-1.小さく軽い制御盤であれば、フレームは必要ない
小さく軽い制御盤であれば、フレーム構造にする必要はありません。
フレーム構造の場合、周囲をフレームの骨組みがあるので強度が増します。
具体的には筐体の捻じれや歪みに強くなります。
しかし、フレーム自体の重さも加わって筐体の重さも増します。
小さく軽い筐体であれば、そもそもフレーム構造は必要ありません。
フレーム無しで製作して、余計な重量を増やさないようにしましょう。
3-2.大きい制御盤はフレーム構造は必須
フレーム無しで製作した場合に問題になる点として、大きい制御盤だと強度があまりないために少し押しただけでグラグラする可能性があります。
また、天井に取り付けたアイボルト(制御盤を吊るための輪のついたボルト)の取付部分から鋼板が裂けてしまうことがあります。
制御盤にはアイボルトを取付するために穴が開いています。
重量が重過ぎると耐え切れずに鋼板が曲がったり、最悪の場合には穴の部分から鋼板が裂けてしまい、アイボルトが取れてしまうことがあります。
吊り上げたときにアイボルトが取れれば、当然ながら制御盤は落下して破損したり、近くにいる人に破片がぶつかるなどして大変危険な状態になることは想像がつくと思います。
アイボルトの取付部分から裂けてしまうことを防ぐためにはフレーム構造で製作し、フレームを貫通した穴にアイボルトを取付して吊り上げる必要があります。
重量はフレームに加わることになるので、鋼板だけで支えるような状態にはならず、曲がったり、鋼板が裂けたりする可能性はとても低くなります。
ある程度の大きさ、または取り付け部品に重量物が多いのであれば、筐体はフレーム構造で製作する必要があります。
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4.水切り構造について
制御盤は上の図のような外観のもの、扉に操作機器が取付されているものが多いでしょう。
扉と本体の接する部分の構造によって、防塵対応、防水対応と分かれます。
前述したように、基本構造としては防水対応で製作しておけば間違いありません。
防水対応として製作するには、どのような形状にすればよいのでしょうか。
上の画像のA-A’の断面図を見てみましょう。
上の図は、右側が制御盤の正面になり、扉が取り付く面として見てください。
実際には制御盤はもう少し高さがあるのですが、真ん中は省略して表しています。
赤丸で囲んだ部分が『水切り』と呼ばれる構造の部分です。
図のような形状であれば、扉側の本体と接する部分に防水パッキンを貼り付ければ防水構造となります。
上から降ってきた雨なども『水切り』形状によって雨は溝の間を流れ落ちていくので、盤内に水が浸入することはありません。
図のような形状にしておけば、防塵性能も高くなり、防水機能も持っています。
屋外防水仕様はもちろんのこと、屋内防塵仕様であっても基本形状として『水切り』形状としておくことがよいでしょう。
都度、形状を変更したり使い分けたりすることによる間違った際のリスクは高いです。
『水切り』形状を基本構造として考えておきましょう。
5.さいごに
屋内、屋外での必要な構造、筐体のフレーム有無、水切りの形状について説明しました。
さいごに要点をまとめてみましょう。
- 屋内では防塵保護、屋外では防水保護の機能が求められる
- 筐体構造は防水保護対応の構造を基準として考える
- フレーム構造は小さい盤には不要だが、大きい盤には必須
- 水切り形状とすることで、防塵保護、防水保護に対応する
より品質が求められる時代です。
出来るだけ高い性能を有した状態、スペックに余裕を持たせることで要求仕様と品質に応えていく必要があります。
筐体構造の基準としては『防水』として考えて、筐体設計をしていきましょう。
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