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今回は制御盤のIP保護等級について、等級のもつ意味や満たす性能について紹介しています。
制御盤を購入する際にカタログなどに『IP〇〇』という表記があります。
最近ではスマートフォンなどでも表記を見かけますが、数字の意味を知らないとわかりませんよね?
この表記は『IP保護等級』というもので、このページを見れば『IP保護等級』の数字の意味が分かります。
意味さえわかってしまえば、制御盤の図面に『IP〇〇相当』と表記が書けるようになります。
目次(概要)
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1.IP保護等級ってなに?
IP(=Ingress Protection:侵入への保護)保護等級は、製品の防塵、防水性能を表すものとしてIEC60529で決められています。IECは国際電気標準会議が制定している国際規格になり、その国際規格で防塵、防水性能を定めているということになります。制御盤やその他電気製品に記載のあるIP等級は、国際ルールに則って試験を行い、その表記をしています。
2.IP保護等級の表記のルールって?
IP保護等級は、第一特性文字、第二特性文字、付加特性文字を”IP”のあとに3桁で示します。第一特性と第二特性は必ず表しますが、付加特性はある場合のみ文字を付加します。
それぞれの特性の意味は以下の通りです。
・第一特性文字
固形物の侵入及び人体保護に対する保護特性
・第二特性文字
水の侵入に対する保護特性
・付加特性文字
危険な箇所における人体保護に対する保護特性
それぞれの特性には数字、文字で特性を表します。各特性の数字や文字の意味については次の項目をご覧ください。
3.IP保護等級の数字(文字)の意味は?
3-1.個体に対する保護(第一特性文字)
第一特性文字は、防塵性能を表すものです。固形物の大きさ毎に、どの大きさの物を防げる性能を有しているかを数字で表します。
数字が大きくなるほど防塵性能に対して高性能であることを表します。
X:規定しない
0:無保護
1:直径50mm以上の外来固形物に対する保護
2:直径12.5mm以上の外来固形物に対する保護
3:直径2.5mm以上の外来固形物に対する保護
4:直径1.0mm以上の外来固形物に対する保護
5:粉塵の内部侵入を防ぐ(防塵)、若干の侵入でも正常に動作
6:粉塵が内部に侵入しない(耐塵)
3-2.水の侵入に対する保護(第二特性文字)
第二特性文字は、防水性能を表すものです。水滴から噴流、沈めた時の防水性能までを数字で表します。
例えば、雨であれば真上から降ることが予想されますが、風のある時の雨は角度がつきます。この角度までも明記されています。
一般製品でいうところの「生活防水」はIPX1~IPX4、『完全防水』はIPX5~IPX8となりますが、メーカーによってまちまちです。IP保護等級で記載されているものは、下の数字の意味の通りになりますので、注意して見た方がよさそうです。
X:規定しない
0:無保護
1:鉛直落下の水滴に対する保護
2:鉛直から15度以内の水滴に対する保護
3:鉛直から60度以内の水滴に対する保護
4:あらゆる方向からの水滴に対する保護
5:あらゆる方向からの水の噴流に対する保護
6:あらゆる方向からの水の強い噴流でも内部に水が入らない
7:一時的に水没しても内部に水が入らない
8:指定した圧力のかかる水中でも内部に水が入らない
3-3.危険な箇所に対する人体保護(付加特性文字)
一見すると第一特性文字と同じように思えますが、危険な箇所への接近に対しての保護になります。私は付加されているものを見たことはありませんが、工作機械のようなものには記載されていそうですね。
A:手の甲 鋼球50mm
B:指 直径12mm 長さ80mm
C:工具 直径2.5mm 長さ100mm
D:針金 直径1.0mm 長さ100mm
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4.制御盤の場合のIP保護等級
制御盤の場合のIP保護等級はどんなケースがあるのか、具体的に見てみましょう。
あるメーカーで市販されている制御盤には『片扉:IP5X』と記載があります。このIP保護等級は、防塵性能は『粉塵の内部侵入を防ぐ(防塵)、若干の侵入でも正常に動作』であり、防水性能は『規定しない』ということになります。
同じシリーズでも『両扉:IP4X』と記載があり、両扉にすることで防塵性能は『直径1.0mm以上の外来固形物に対する保護』となります。扉を増やすことにより、若干の隙間が増えることから防塵性能の保護等級が1ランク下がっています。
例えば『片扉:IP5X』の制御盤を購入し、熱対策のために扉と左側面に穴を開けてフィルターとファンを設置したとします。この場合、ファンやフィルタの保護等級によってIP保護等級も変わります。ファンやフィルターの性能が『IP3X』であれば、製作した制御盤のIP保護等級は『IP3X相当』であり、防塵性能は『直径2.5mm以上の外来固形物に対する保護』ということになります。
同じメーカーの防水性能がある制御盤には『IP65』と記載があります。このIP保護等級は、防塵性能は『粉塵が内部に侵入しない(耐塵)』であり、防水性能は『あらゆる方向からの水の噴流に対する保護』ということになります。
熱対策のために防水対応のファンとフィルタを購入して制御盤に取付したとします。ファンとフィルタの低い方のIP保護等級が『IP53』となっていたとします。
このファンとフィルタを取付して製作した制御盤のIP保護等級は『IP53相当』となり、防塵性能は『粉塵の内部侵入を防ぐ(防塵)、若干の侵入でも正常に動作』であり、防水性能は『鉛直から60度以内の水滴に対する保護』となります。
市販の制御盤を購入したとしても、加工した場合にはIP保護等級は取付する物や加工の度合いによって変わってしまうことがあります。防水性能の高い制御盤を購入したとしても、加工が必要な場合には防水性能が失われる可能性もありますので、注意が必要です。
5.さいごに
自社で製作する場合には、図面に『IP**相当』のような保護等級を記載してあげるとよいでしょう。客先へのアピールにもなります。過剰な品質は不要ですが、必要な品質が保てるようにする必要があります。客先との打ち合わせでも「IP等級はどのくらい必要か?」という質問に回答してもらえれば、仕様も明確になります。
市販の制御盤にはカタログ等にIP保護等級が記載されています。屋外で使用する制御盤には当然ながら防水性能が必要です。室内であっても、洗浄するような場所においては、IPX5相当の防水性能が必要になります。
設置する環境にあったIP保護等級を有した制御盤を製作する必要がありますので、IP保護等級については覚えておきましょう。
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