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制御盤製作時の電線の選定手順と注意点|選定基準が分かれば簡単

制御盤製作時の電線の選定手順と注意点|選定基準が分かれば簡単

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このページでは、制御盤の製作に使用する電線の選定手順と注意点、参考の電線種類についてご紹介しています。

制御盤では、各制御機器に対して電線を接続して電路(電気の道)を作ります。
電線と言ってもたくさんの種類があるので、私も若い時にはカタログを見てもどこを見て選んでよいのか、「???」な感じでした。

電線の選定は、ある程度の種類と選定基準さえ分かっていれば簡単です。
制御盤に使用する電線はある程度の種類さえ覚えていれば問題ありません。

このページでは参考の選定例も紹介しています。
よく分からないということであれば、参考の電線種類から選べば大きく仕様から外れることはないと思います。

電線の種類、電線を選ぶ基準、注意する部分や選定手順について理解しておきましょう。

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1.電線とケーブルの違いって?

電線とケーブルの違い

 

『電線』と一括りに言っても様々な種類があります。
まずは『電線』と『ケーブル』の違いについて、それぞれの電線の種類と特徴を把握しておく必要があります。

制御盤で使用するものを前提として説明します。
(建物などの一般電気工事とは一緒にしないでください)

『電線』とは、導体が絶縁体の保護被覆で覆われているものです。
正確には『絶縁電線』が正しいのですが、総称の『電線』と言う人が多いです。

制御盤を製作している人たちは『単線』という言い方をすることもあります。
この後で説明する『ケーブル』と区別して伝えるために『単線』という別の言い方で表しています。

『単線』には絶縁被服がありますが、さらに外側が保護被覆(シースという)で覆われているものを『ケーブル』と言います。
通信用のファイバーが入っているものも『ケーブル』と言います。

制御盤で使用するのはほとんどが『電線』であって、盤内では『ケーブル』を使用することはあまりありません。『単線』と『ケーブル』の違いをしっかりと覚えておきましょう。

 

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2.制御盤に使用する電線はどんな種類があるの?

 

電線にも様々な種類がありますが、ここでは制御盤で使用する電線の種類を紹介します。

 

エコ非対応品

IV  [600V ビニル絶縁電線]

素線はより線ですがやや太く、硬めの電線です。
曲げたりするとカチッと形が決まりますが、取り回しはややしずらいです。

色で分けて配線できるように、赤、青、白、黒、黄、緑など多色が用意されています。
一昔前の制御盤にはIV線が使用されることが主流でした。

現在はKIV線の方が主流となっています。
最高使用温度は60℃となっています。

 

KIV [600V 電気機器用ビニル絶縁電線]

IVと同じく素線はより線ですが素線そのものがIVよりも細く、柔らかめの電線です。
柔らかいため、IVよりも取り回しは楽にできますが、カチッと決まらないというデメリットもあります。

ダクト内に収めて使用するときにはIV線よりもKIV線のほうがいいでしょう。
色もIVと同様に多色で用意されています。

現在の制御盤ではKIV線が主流となっています。
最高使用温度はIV線と同じく60℃となっています。

 

MLFC [600V 難燃性ポリフレックス電線]

MLFCは電車や新幹線、産業用車両に使われている電線です。
日立金属(旧日立電線)の電線型式であり、『WL1』という規格で呼ばれることもあります。

『WL1』の[W]は WHEEL の略であり、車輪のついているものに使用する電線という意味があります。
電車や新幹線などの公共交通機関にも使用されるくらい優れた電線です。

難燃性、耐熱性、耐寒性に加えて、電気特性、柔軟性に優れています。
最高使用温度も90℃(盤内の場合)となっており、IVやKIVよりも高い許容電流値となります。

メーカーによって型式が違いますので注意が必要です。

古河電工:EM-LMFC
フジクラ:EM-LMCF
住友電工:EM-LFC

日立金属のみエコ対応品と非対応品で型式が分かれていますが、その他のメーカーはエコ対応品として扱っています。

 

MVVS [60V マイクロホン用コード]

アナログ信号などの微弱な信号を扱う場合、シールド線と呼ばれる電線を使用します。
シールド線は、絶縁被覆とシースの間に編組シールドと呼ばれる金属線の網が入っており、これによりノイズの影響を受けにくくしています。

DC0-10V、DC1-5V、DC4-20mAなどのアナログ信号ではシールド線を使用してノイズ対策をしておきましょう。

 

KNPEV-SB [60V 弱電計装用ケーブル(錫めっき軟銅線編組遮へい付き)]

こちらもシールド線となりますが、MVVSとの違いはツイストペアであるということです。
単線を『ペアでより線』とすることで、ノイズの影響を打ち消す効果があります。

特に低電圧低電流の信号では、誘導での低い電圧でも誤作動の原因となってしまいます。
そのため、ツイストペアケーブルでノイズを打ち消しあうこと、シールド付きで影響を受けにくくすることでノイズ対策をします。

メーカーによって型式が違うので注意が必要です。

 

エコ対応品

 

エコ対応品とは、EM電線、EMケーブルと言われています。

EM=Eco-Material(エコマテリアル)

被覆に使用する材料に有害物質を発生するようなものを使用しておらず、リサイクルに適した材料を使用しています。
また、難燃性であり、煙発生量も少なくなるようになっています。

難点として、エコ非対応品に比べて値段が高いことが上げられます。
ユーザーからの仕様で『エコ対応品』の指定があった場合は、EM電線、EMケーブルから選定しましょう。

 

EM-IE/F [600V 耐燃性ポリエチレン絶縁電線]

IVのエコ電線仕様です。
被覆以外はIVとほぼ同じで、サイズも太いものまで用意されています。

IV同様に硬いので取り回しが大変です。

 

EM-KIE/F [600V 電気機器用耐燃性ポリエチレン絶縁電線]

KIVのエコ電線仕様です。
IEと同様に被覆以外はKIVとほぼ同じです。

しかし、こちらは太いサイズのものが用意されてなく、14sqくらいまでしか見たことがありません。
太くなる場合には他のエコ電線(IEまたはEM-MLFC)を選定するようにしてください。

KIVと同様に柔らかく、取り回しが容易です。

2019年11月29日追記
日立金属では250sqまでKIEの取り扱いがあるようです。
他メーカーも太いKIE電線に対応している可能性があります。

EM-MLFC [600V 難燃性ノンハロゲン架橋ポリエチレン電線]

MLFCのエコ電線仕様です。
こちらは日立金属の型式ですので、他メーカーでは型式が違うので注意してください。

MLFCと同様に電車などに使われていて、特性、最高使用温度もMLFCと同じです。

 

EM-MEES [60V マイクロホン用耐燃性ポリエチレンコード]

MVVSのエコ対応品です。
被覆以外の仕様はMVVSと同様です。

エコ対応指定がありアナログ信号を使用する場合などに使われます。

 

EM-KNPEE/F-SB [60V 弱電計装用ケーブル(錫めっき軟銅線編組遮へい付き)]

KNPEV-SBのエコ対応品です。
こちらも被覆以外はKNPEV-SBと同様です。

エコ対応品のツイストペアケーブルはこのケーブルを使用しましょう。

 

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3.電線の太さと許容電流について

 

電線は太さによって安全に流せる電流値が変わります。
細い電線に大きな電流が流れると、電線は温度が上がって燃えてしまいます。

流す電流値から電線の太さを決めていきましょう。

太さを決める際に注意しなければならないことがあります。
電線の種類によって、同じ太さでも流せる電流値は変わります。

どの電線を使うかを決めてから、太さを決めるようにしましょう。

下記に制御盤の製作時に使用する電線の許容電流一覧を掲載します。

 

電線サイズ
(sq)
許容電流(A)
IV/KIV IE/KIE MLFC
0.75 7 16 19
1.25 19 23 24
2 27 33 34
3.5 37 45 47
5.5 49 60 63
8 61 74 78
14 88 107 113
22 115 140 148
38 162 197 208
60 217 264 279
100 298 363 384
150 395 482 509
200 469 572 605

※気中1条、周囲温度30℃で導体許容温度60℃の場合
※MLFCのみ気中1条、周囲温度40℃で導体許容温度90℃の場合

 

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4.電線を選ぶ際の注意点

電線を選ぶ際の注意点

 

制御盤で使用する電線を選ぶ際の注意する点として以下が挙げられます。

  • 使用温度と雰囲気(湿度など)について
  • 使用する電圧について
  • 流れる電流値について
  • アナログ信号などの計装制御の場合、ノイズ対策について
  • 高級、ハイスペックな電線をむやみに使用してないか(予算に応じて)

 

使用電圧、電流は設計する上で確認しているので問題ない方がほとんどでしょう。
しかし、使用温度と雰囲気をつい見落としてしまうことがあります。

温度、湿度は重要な条件となりますので、必ず確認しておきましょう。

 

4-1.電線サイズ選定についての注意点

 

許容電流から電線サイズを決めていきますが、一つだけ注意点があります。
このページにも掲載している許容電流のように、各社で許容電流をカタログ等で示しています。

許容電流は『周囲温度条件』『気中1条配線』などの条件があります。

 

言葉の意味

まず言葉の意味ですが、『気中』は空中、『1条配線』というのは外見上の電線本数になります。
2芯のケーブルが1本の場合は『1条』、3芯のケーブルが3本なら『3条』、単線が4本なら『4条』となります。

このページに掲載の許容電流は『気中1条配線時の許容電流』になります。
1条なら掲載の許容電流ですが、3条になった場合は『気中1条配線』の許容電流の7割くらいが最大許容電流値だと考えてください。

電線を束ねると、隣の電線の熱が伝わってきます。
すると、隣り合う電線の熱が加わって電線の最大許容温度に達しやすくなります。

例えて言うなら、ヒーター1台よりも3台あった方が部屋は早く温まりますよね?
この原理と同じで、束ねた電線は隣り合う電線の熱の影響によって最大許容電流値は下がることになります。

制御盤ではたくさんの配線をすることになります。
掲載しているままの値を参考にして電線サイズを決めてしまうと燃えてしまうこともあります。

 

安全率

そこで必要になってくる考え方が『安全率』です。
いちいちとたくさんの本数の配線がどこに収まるかを見極めて電流値を決めていくのは手間と時間がかかり過ぎます。

私の場合は『安全率』を50%として電線サイズを決めています。

例えば、ある制御ラインのAC100Vでは全部で 12A の電流が流れるとします。
電線はKIVの黄と仮定した場合、掲載されている数値からすれば電線サイズは『1.25sq』(sq=m㎡)が妥当のように思えますが、『安全率』を『50%』とするので、KIVの1.25sqの最大許容電流を 9.5A と考えていきます。

すると、もう1サイズ上げて『2sq』が妥当と考えて電線サイズを決めるということです。

 

あなたも電線サイズを決める場合には、隣り合う電線の熱の影響があることを忘れないでください。
多くの配線本数を同じダクト内などに収める場合は『安全率』を『40%』にしてもよいです。

ただし、安全率を下げれば電線が全体的に太くなり、その分だけ制御盤の重量が重くなります。
過剰になり過ぎないように気を付けてください。

何事も“程度”は大事です。

 

4-2.アナログ信号の際の電線選定の注意点

 

アナログ信号がある場合は、可能であればツイストペアシールド(KNPEV-SB または EM-KNPEE/F-SB)を使用しましょう。

私も過去にケチって MVVS を選定したのですが、アナログ信号がやたらと上下に振れて困りました。
ツイストペアシールド線に変えたら、かなり緩やかな上下動に変わったことがあります。

微弱な電位の信号を扱うときは、小さいノイズでも誤認識してしまう恐れがあります。
予算などの都合もありますが、不具合が起きてから直すのは手間もお金もかかります。

ノイズによる不具合は発見が大変なので、できるだけノイズ対策はしておきましょう。

 

4-3.エコ電線、エコケーブル指定時の注意点

 

最近ではエコ対応品の指定が多くなってきています。

エコ電線、エコケーブルは被覆、シースに難燃性で有害物質が発生しないものを使用しています。
リサイクルにも適した材料を使用しているので、値段がやや高くなってしまいます。

予算計上、見積りの条件にエコ対応がなく、発注時にエコ対応となっている場合は、見積り条件が違いますから厳密に言えばコンプライアンス(法令順守)に反しています。
客先へ追加要求すべき事項となります。

ただし、依頼を受ける側としても見積り時に『エコ対応指定なしとして算出している』等のコメントを見積書内に記載してエコ対応ではないことを明記していると、後々でややこしくなくなるでしょう。

エコ電線、エコケーブルの指定は仕様から見逃すことのないように気をつけましょう。
製作した後で気づいた場合のことを考えると・・・ぞっとします。

手間でも仕様にあるかを必ず確認して進めていきましょう。

 

4-4.電線による重量過多

 

先ほど『安全率』の項目でも記載しましたが、電線サイズが全体的に太くなると、その分だけ制御盤の重量が増えます。
電線と言えども、長さ、本数によって、1サイズ上の電線になるだけで重量は50kg、100kgと簡単に増えます。

設置場所の重量制限が仕様にある場合には電線サイズが過剰に太くなっていないかをよく確認しましょう。

電線1本につき『*何mあたりの重量』など、カタログに重量に関することは記載されています。
記載がなければ製造元に問い合わせれば回答してもらえます。

重量制限がある場合、製作前に仮重量を連絡する場合には、必ず電線による重量を検討しておきましょう。

 

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5.制御盤製作における電線の選定例

制御盤製作における電線の選定例

 

実際に電線を選定する際、私はパターンを決めてしまっています。
パターンから外れた仕様の電線は調べますが、ほとんどがパターンにはまります。

仕様による選定例を以下に挙げておきますので参考にしてください。

※安全率は『50%』を基準としています。

 

5-1.エコ指定なし

 

主回路(動力回路)

KIV(電線サイズが22sqを超えない、または22sqは受電のみで他は14sq以下の場合)

MLFC(電線サイズが22sq以上のものが多数ある場合)

 

制御回路

KIV(主ラインは2sq以上、ほかは電流値によるが、細くても0.5sq)

 

アナログ回路

KNPEV-SB(その他設備も多数ある、または盤内にインバータや主回路が多い時)

MVVS(その他設備も周囲になく、盤内も主回路が少ない場合)

 

5-2.エコ指定あり

 

主回路(動力回路)

EM-KIE/F(電線サイズが14sq以下の場合、IEと混在OK)

EM-IE/F(電線サイズが22sq以上の場合、KIEと混在OK)

EM-MLFC(電線サイズが22sq以上のものが多数ある場合、IE、KIEと混在付NG)

その他(IEとKIEは混在しても色が同じなので見た目も悪くない、EM-MLFCは色が黒なので統一して使用する)

 

制御回路

EM-KIE/F(主ラインは2sq以上、ほかは電流値によるが、細くても0.5sq)

 

アナログ回路

EM-KNPEE/F-SB(エコ対応品の時はアナログ回路は無条件でこの電線のみ)

 

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6.さいごに

さいごに

 

電線の選定については理解できましたか?

色々な仕様条件によって選定も変わってきます。
ここで紹介している情報はごく一部であり、その他にも様々な仕様や条件があります。

制御盤と言っても、薬品を使う生産ライン向けの場合や食品関係、医療関係などによって使う電線は指定されていることがあります。
その場合は指定された電線で設計を進めましょう。

よく使用する電線については許容電流表を作成しておき、自分で確認できるようにしておくとよいです。

注意点については必ず読んでいただきたい部分です。
せっかく考えて製作する制御盤ですから、客先にも気に入っていただける制御盤にすべく、電線も間違えないように気を付けて選定していきましょう。