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制御回路は分散化してリスク回避に備えよう|集中と分散の使い分け

制御回路は分散化してリスク回避に備えよう|集中と分散の使い分け

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最近ではPLCの高機能化により、制御盤でもPLCに全てをやらせようという設計が多いと感じます。
しかし、プログラムを作る側の負担は大きいですよね。

実は、全ての制御をPLCなどの1点に集約させると故障時のリスクが大きくなります。
なぜなら、PLCが故障することで関連するすべての制御が停止してしまうからです。

このページでは、制御を集中することと分散することのメリットとデメリットについてご紹介しています。

読み終えれば、集中制御と分散制御それぞれのメリットとデメリットを考慮して設計できるようになります。

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1.集中制御することのメリットとデメリット

集中制御することのメリットとデメリット

 

集中制御にすると、設計と製作は楽になる

制御を集中すると、ハード面(電線接続などの制御回路)は設計が楽になります。
なぜなら、あとはプログラムで制御を考えればいいからです。

制御盤にPLCを組み込んでいる場合、全てPLCによって制御させれば、あとはプログラムを作成すれば完成です。
回路もシンプルになるので、ハード設計者としては楽になります。

制作する側も非常に楽になります。
全ての制御信号はPLCと接続すればいい、となるからです。

制御用の電線は1カ所に集中することになるので、行先に迷いはありません。
せめて、どの端子に接続すればいいのか”だけ”気にすればいいからです。

プログラムは汎用プログラムを使いまわしておけば、プログラム設計も楽になります。
設計側、製作側が共に楽になるというメリットがあります。

 

集中した制御は1点の故障で全て停止する

集中制御のとき、PLCが故障したときのことを想像してみてください。
PLCの1ユニット、またはCPUや電源が故障した場合にはすべての制御が停止してしまいます。

例えば温度制御の必要な箇所だけは停止させずに制御を続ける、といったことが出来ません。
手動操作もPLCで制御していれば、人が介入しても動かすことが出来なくなります。

全てを1点に集中させることは、設計や製作でのコスト面のメリットはあるものの、ユーザーとしては1点の故障ですべてを停止させることになってしまいます。

 

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2.分散制御をすることでのメリットとデメリット

分散制御をすることでのメリットとデメリット

 

機器の故障リスクを分散できる

集中制御では1点が故障することで全ての制御を失いますが、分散制御では全てを失ってしまう可能性は低くなります。

例えば、手動操作はハード回路、自動運転はPLCによるプログラム制御とすれば、故障した機器以外の制御はそのまま動かすことが可能です。

自動運転は出来なくなっても、人が介入することで各機器を動かすことができる等です。
緊急時には分散制御の方が手動操作でなんとか機器を動かすことが出来るメリットがあります。

 

部品点数、作業時間などのコストが増える

分散制御では1点の故障で全てが停止するような可能性は低くなる反面、部品点数が多くなたり、設計や製作の手間がかかったりとコストは上がってしまいます。

先述した例えのように手動操作はハード回路で制御するならば、ハード制御用の部品が必要です。
そして、自動運転の時だけPLCから制御できるような回路設計をする必要があります。

制作側としても電線を接続する箇所が増えて、電線本数そのものも増えます。
近年のコストダウンの流れからは逆行することになります。

部品点数が増えれば制御盤も大きくなることから、小型化の流れにも反しますね。
ユーザーにとっては安全に運用できる反面、初期投資は上がってしまいます。

 

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3.どこを活かしてどこを削るか

どこを活かしてどこを削るか

 

実際の運用をよく理解しておく

集中制御と分散制御のメリット、デメリットを理解した上で、ユーザーにも製作側にもメリットがあるようにするにはどうすれば最善でしょうか?

実際の装置や制御盤の運用についてある程度の理解が必要です。
運用の全てを理解する必要はなく、制御上で必要な運用に関する情報を確認しておきましょう。

・急に止められない制御対象はあるか
・どうしても手動で操作したい制御対象があるか
・全てPLCで集中制御して、故障したときに交換まで待てるか

上記についてユーザーに確認しておくことで、最低限の必要な機器のみ手動で介入できるようなバックアップとしての分散制御をすればいいのです。

 

必要な機器は分散制御、他は集中制御にする

確認した内容に合わせて、手動で介入が必要な制御対象はハード回路で手動操作が出来るように設計します。
自動制御や手動で介入が不要な制御対象は集中制御にします。

要所で集中制御と分散制御を使い分けることで、無駄にコストを増やすことなく設計、製作が出来ます。
全てを分散制御にするとコストはかなり増えますから、なるべく集中制御にすることでコスト増大を防ぎます。

ユーザー側が望むものを製作してこそのエンジニアです。
適材適所で使い分けてあげれば、ユーザーとしても満足できる制御盤が製作できます。

 

単独制御の機器はハード回路が望ましい

要所で使い分けると書きましたが、1点だけ注意して設計を進めてほしいことがあります。
単独で制御すればよいものは、単独制御可能なハード回路設計とした方がいいです。

例えば、常に温度制御するヒーターがあるとします。
100度以下ならON、100度を超えたらOFF。

単独で動作するヒーターなどは、温度調節計などの制御機器を使用しましょう。
運転、停止情報だけをPLCで掴んでおくような回路が望ましいです。

常に動作させるもので条件でON-OFFするものは、専用の制御機器を用意することで停止するリスクも減らせること、プログラム設計を減らすことにも役立ちます。

専用の制御機器があるかどうかを調べて、あれば専用機器に任せましょう。
これも適材適所の使い分け方法のひとつです。

 

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4.さいごに

集中と分散|さいごに

 

ここまでの内容をまとめておきます。

集中制御と分散制御のメリットとデメリット

  • 集中制御は1点に情報を集めるので設計、製作の手間が減らせる
  • 集中制御は1点が故障することで全ての制御が停止する可能性がある
  • 分散制御は制御を分散させることで故障しても手動介入で操作できる
  • 分散何制御は設計、製作の手間がかかりコスト増大する
  • 集中制御の方がコストは下がる

 

集中制御と分散制御の使い分け基準

  • どうしても止められない制御対象はあるか
  • 緊急時に手動介入したい制御対象はあるか
  • PLCが故障したときに交換まで待てないか
  • 上記内容にYESの項目は分散制御とする

 

全てにおいて高機能を求めればよいわけではありません。
ユーザーが求める機能を自分たちの手で高品質に仕上げることが大切です。

集中制御と分散制御をうまく使い分けて設計をしていきましょう。